W・R・グレースビル

W・R・グレース・ビル

W・R・グレース・ビル（W. R. Grace Building）は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市の中心部、マンハッタンに位置する著名な超高層ビルです。この建築物は、現代建築を代表する設計者の一人であるゴードン・バンシャフトによって設計され、1974年にその建設が完了しました。元々はW.R. Grace Companyによって建設が依頼されたビルであり、かつては会計事務所のデロイト&トウシュ（以前はデロイト・ハスキンズ＆セルズとして知られていました）も主要なテナントとして利用していました。

ビルの公式な住所は「1114 アベニュー・オブ・ジ・アメリカス」であり、これは一般的に6番街として知られています。しかし、メインエントランスは5番街と6番街の間に位置する42丁目に面しています。このビルはブライアント・パークの正面に位置しており、斜め向かいには歴史あるニューヨーク公共図書館本館が建っています。周囲の活気あふれる環境の中で、その存在感を放っています。

W・R・グレース・ビルは、その規模においても注目に値します。総床面積は約151万8000平方フィートにも及び、敷地面積は約100フィート x 442フィート、合計で約6万7875平方フィートの広さを有しています。現在のこの建築物の所有者は、ブルックフィールド・フィナンシャル・プロパティーズ（Brookfield Financial Properties, LP）です。

建築的特徴

このビルの最も印象的な建築的特徴の一つは、北側（43丁目沿い）と南側（42丁目沿い）のファサードが、垂直方向に緩やかな凹状の曲線を描きながら斜めに立ち上がっている点です。この独特なデザインは、同じくゴードン・バンシャフトが設計した57丁目のソロー・ビルと共通する要素を持っています。実は、この類似性は偶然ではなく、ソロー・ビル向けに検討されたものの最終的に採用されなかった別の設計案が、W・R・グレース・ビルの設計に転用された結果生まれたものです。外壁は白色のトラバーチンで覆われており、これにより周囲の建物と比較して明るく洗練された外観となっています。

歴史と現在の利用

W・R・グレース・ビルが建設される以前、この場所にはスターンズ（Stern's）デパートメントストアの旗艦店と本社が立地していました。ビルの建設後、2005年にはニューヨーク市立大学の「ウェルカム・センター」が1階に開設されました。このセンターは、大学への入学を希望する人々に対して、必要な情報をワンストップで提供する役割を担っています。

ポピュラーカルチャーにおける登場

W・R・グレース・ビルの特徴的な外観は、様々なポピュラーカルチャー作品にも登場しています。

2007年に公開されたマーベルコミックス原作の映画『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』では、ヒューマン・トーチから逃れるシルバーサーファーが、このビルの曲線を描いたファサードをサーフボードで滑り降りるシーンが描かれました。また、彼の乗り物がビルの前に転倒して停車するシーンに関連した自動車損害賠償責任保険のコマーシャルも制作されています。
2010年のコメディ映画『恋とニュースのつくり方』では、主人公ベッキー・フラーが勤務する架空のテレビネットワーク「IBS」の本社ビルとして、このW・R・グレース・ビルが使用されました。
* さらに、D.C. Comicsの世界における研究機関「S.T.A.R. Labs」や、アニメシリーズ『The Venture Bros.』に登場する「1 Impossible Plaza」の本社ビルのデザインモチーフとしても、その特徴的な外見が取り入れられています。

主なテナント

現在、W・R・グレース・ビルには多くの著名な企業や団体が入居しています。代表的なテナントとしては、国際的な法律事務所であるベーカー&マッケンジー、投資運用会社のクラリウム・キャピタル（Clarium Capital）、法律事務所のクーリー（Cooley）、そして広告・マーケティング会社のインターパブリック・グループ・オブ・カンパニーズ（Interpublic Group of Companies）などが挙げられます。

ゴードン・バンシャフトによる革新的なデザインと、マンハッタンの中心という立地により、W・R・グレース・ビルは建築的な重要性と共に、都市の景観における重要な一部を構成しています。その独特なファサードは、多くの人々に認識されるマンハッタンのランドマークの一つとなっています。

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