W84 (核弾頭)

W84核弾頭の概要

W84は、アメリカ合衆国で開発・運用されていた核弾頭であり、主にアメリカ空軍のBGM-109G地上発射巡航ミサイル（GLCM）のために設計されました。この弾頭の開発は1978年にローレンス・リバモア国立研究所で始まり、1983年から本格的に生産が行われました。最終的には約350発が製造されています。

開発の背景と目的

W84は、B61弾頭の進化版として開発されました。B61は初期の核弾頭の一つであり、その後の技術開発の基礎を作りました。W84は、核戦力の多様性と効率性を追求するため、よりコンパクトで威力を調整できる弾頭として設計されました。これにより、さまざまな戦略的シナリオに対応できる能力が向上しています。特に、核出力は可変であり、0.2キロトンから150キロトンの範囲で調整可能です。

物理的特性

W84の外形は直径13インチ（約33センチメートル）、長さ34インチ（約86センチメートル）というサイズです。また、重量は388ポンド（約176キログラム）で、非常に効率的な設計により、ミサイルの搭載が容易でした。これに加えて、起爆装置にはトリアミノトリニトロベンゼンを主成分とするPBX爆薬が使用されました。このPBX爆薬は低感度であり、外部からの衝撃に対して安全性が高く、事故のリスクを低減しています。

核戦力と軍事的役割

W84弾頭は、地上発射巡航ミサイル（GLCM）と組み合わせることで、迅速な応答能力と柔軟性を持つ核戦力の一部でした。しかし、1991年には中距離核戦力全廃条約に基づき、GLCMが廃棄されることとなり、W84弾頭もその運用が停止しました。廃棄されたとはいえ、W84の弾頭自体は依然として厳重に保管されており、アメリカの核戦力において重要な位置を占めています。

また、W84の開発は、冷戦時代の戦略的地政学に大きな影響を与えました。この弾頭は、アメリカ及びその同盟国が核抑止力を維持するための重要な要素として位置づけられており、その設計と運用方針は、他国の核戦略にも影響を及ぼしました。

現在の状況

現在では、W84は現役ではありませんが、その技術的成果や設計思想は、まだなお核軍備の議論において参照されることがあります。例えば、これらの技術は新世代の弾頭開発や、既存の核戦力のモダナイズ（近代化）にも活用されるなど、核戦力の進化に寄与しています。

W84は、高い技術と戦略的意義を持つ核弾頭として、アメリカの軍事史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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