WANDA/ワンダ

映画『WANDA/ワンダ』の魅力

『WANDA/ワンダ』は、1970年に公開されたアメリカのクライム映画であり、アメリカの底辺社会に生きる女性の辛辣な現実を描いています。この作品は、インディペンデント映画の道を切り開く存在としても有名です。監督、脚本、主演を務めたのはバーバラ・ローデンであり、彼女にとって唯一の監督作品となっています。夫だったエリア・カザンが製作に協力し、当時の社会における女性の位置づけを照らし出しています。

あらすじの概要

物語の中心となるのは、ペンシルベニア州の炭鉱町に住む主婦ワンダ。彼女は夫との別れを経て、育児を放棄し妹の家に身を寄せている状況にあります。離婚裁判に臨むものの、彼女は法廷に遅れた結果、ほんのり無関心な態度で親権を放棄し離婚を受け入れます。

職を求める彼女は、縫製工場での仕事にも恵まれず、一夜の関係を持った男の車に無理やり乗り込みますが、男は彼女を置いて去ってしまいます。金銭的な困窮に直面したワンダは、映画館で休憩を取りますが、その間に財布を盗まれ無一文となります。

ワンダは仕方なくバーに立ち寄り、そこで出会った男が強盗だったことを知りつつも、一緒に逃げることを選びます。彼女は男とともに各地を旅しながら、身体的、精神的な虐待に苦しむことになります。

カオスと非情

ノーマンとの旅の中で、ワンダは買い物に行くなどしつつも、ノーマンの暴力や横暴に耐えざるを得ません。ノーマンは銀行強盗の計画を立て、彼女を共犯として訓練します。この危険な状況下で、彼女は次第に彼の内に秘めた悲しみを垣間見ることになりますが、それでも逃げられない状況に追い込まれています。

強盗計画が実行される中、ノーマンは警備員によって射殺され、再び一人となったワンダは自らの運命に翻弄され続けます。その後も、他の男に狙われることになり、必死に逃げる姿が描かれています。

評価と文化的意義

『WANDA/ワンダ』は、1970年のヴェネツィア国際映画祭で最優秀外国映画賞を受賞し、カンヌ国際映画祭にも出品されましたが、当時はアメリカでほとんど評価されませんでした。しかし、その後の映画監督たちによって「失われた傑作」として認識されるようになりました。

マーティン・スコセッシの支援を受けて作品は修復され、2017年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されました。このことから、作品が持つ文化的・歴史的な重要性が再評価されることとなりました。

結論

『WANDA/ワンダ』は、アメリカ映画の隠れた名作として、女性の苦悩や社会の暗部を鮮やかに描写しています。その物語は、観る者に深い印象を残し、今後も多くの人々に語り継がれることでしょう。

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