WHO (ザ・フーのアルバム)

ザ・フー、13年ぶりのオリジナルアルバム『WHO』

ザ・フーが2019年にリリースしたアルバム『WHO』は、2006年の『エンドレス・ワイヤー』以来、実に13年ぶりとなる待望のオリジナルアルバムです。長きに渡るブランクを感じさせない、彼らの創造性とエネルギーが凝縮された作品として、各方面から高い評価を得ています。

制作の背景

この間、ザ・フーは精力的なコンサート活動を展開する傍ら、ロジャー・ダルトリーとピート・タウンゼントはそれぞれのソロ活動にも注力していました。しかし、バンドとしての新作リリースは、デビュー50周年を記念した2014年のコンピレーションアルバムに収録された新曲「ビー・ラッキー」のみでした。

2019年、タウンゼントは新作アルバムの発表と、それに伴うツアーがザ・フーとして最後になる可能性を示唆。ダルトリーによると、2018年2月頃にタウンゼントから新曲を聴いてほしいと頼まれ、当初はソロアルバム用の曲だと思ったそうです。しかし、タウンゼントから「これはザ・フー用の新曲だ」と告げられ、バンドとしての再始動に向けて動き出しました。

タウンゼントは2018年夏から自宅スタジオでデモ制作を開始し、2019年2月よりロンドンのブリティッシュ・グローヴで本格的なレコーディングがスタート。レコーディングはロンドンとロサンゼルスを股にかけ、8月には完了しました。プロデューサーには、レッド・ホット・チリ・ペッパーズやナイン・インチ・ネイルズを手掛けたデイヴ・サーディ、ダルトリーのボーカル・プロダクションには、彼のソロアルバムでも起用されたデイヴ・エリンガが迎えられました。

テーマとコンセプト

本作は、1982年の『イッツ・ハード』以来となる、特定のテーマやコンセプトを持たないアルバムとして制作されました。また、タウンゼントの実弟で、ザ・フーのサポートメンバーでもあるサイモン・タウンゼントが楽曲を提供している点も注目されます。正規メンバー以外の曲が採用されるのは、1967年のアルバム『セル・アウト』以来のことです。

パッケージとリリース

ジャケット・デザインは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で有名なピーター・ブレイクが担当。ブレイクがザ・フーの作品を手掛けるのは、1981年の『フェイス・ダンシズ』以来38年ぶりとなります。ジャケットは、バンドの歴史を象徴する様々な図柄や写真がコラージュされた、印象的なデザインです。

アルバムに先駆け、「ボール・アンド・チェーン」が先行シングルとしてリリースされ、その後も「オール・ディス・ミュージック・マスト・フェイド」、「アイ・ドント・ワナ・ゲット・ワイズ」が配信リリースされました。

アルバムは通常盤に加え、ボーナストラックを追加したデラックス盤、限定デラックスLPが用意され、日本盤には全てのボーナストラックが収録されています。ボーナストラックには、1966年に録音された未発表デモ音源にオーバーダビングを施した楽曲も含まれています。

評価と反響

アルバムは全英アルバムチャートで3位、アメリカのBillboard 200では2位を記録。各メディアからも概ね好意的な評価を受けました。ダルトリー自身が「『四重人格』以来最高のアルバム」と自負し、タイムズ紙も「『バイ・ナンバーズ』以来の最高傑作」と評するなど、絶賛の声が相次ぎました。

収録曲とパーソナル

(収録曲リストとパーソナルは省略)

『WHO』は、ザ・フーの輝かしいキャリアに新たな1ページを刻む、充実した内容のアルバムです。彼らの音楽に対する情熱と創造性は、今もなお衰えることなく、聴く者を魅了し続けています。

もう一度検索