WPS Office

WPS Office：高互換性と低価格を両立したオフィススイート

WPS Officeは、中国の金山軟件（Kingsoft Corporation）が開発したオフィススイートです。日本市場では、キングソフト株式会社が販売とサポートを担当しています。Microsoft Officeと高い互換性を持ちながら、無料または低価格で提供されている点が大きな特徴です。そのため、BTOパソコンや中古パソコンへのバンドルも多く、幅広いユーザーに親しまれています。

ソフトウェア構成と機能

WPS Officeは、主要なオフィスアプリケーションを網羅しています。

WPS Writer: ワープロソフトで、Microsoft Wordとの互換性が高いです。
WPS Presentation: プレゼンテーションソフトで、Microsoft PowerPointとの互換性が高いです。
WPS Spreadsheets: 表計算ソフトで、Microsoft Excelとの互換性が高いです。
WPS PDF: PDFファイルの閲覧、作成が可能なビューアーです。(WPS Office 2から追加)

インターフェースや操作性はMicrosoft Officeと非常に似ており、スムーズな移行が可能です。ただし、Microsoft Officeの廉価版というわけではなく、使用頻度の低い機能は省略されています。一方で、「タブ式のファイル表示」や「段落書式のアシスタント」など、独自開発の便利な機能も搭載されています。

Microsoft Officeとの類似性による訴訟リスクについては、キングソフト側は特許や著作権の専門家と相談の上、法的リスクを回避する対応をとっていると説明しています。

価格とアップグレード

WPS Officeは無料版と有料版が提供されています。無料版は個人・非営利利用に限定され、広告表示や一部機能制限がありますが、多言語対応もされており、Windows、macOS、Linux、Android、iOSといった主要なOSに対応しています。Microsoft StoreやGoogle Play、App Storeなどからもダウンロード可能です。

過去のKingsoft Officeシリーズでは、新しいバージョンのリリース時に無償アップグレードが提供されていましたが、WPS Officeへの移行を機にこの方針は変更されました。ただし、その後も期間限定で無償アップグレードキャンペーンが実施されています。

市場における評価と歴史

WPS Officeは、日本国内のパソコン販売データに基づくBCN AWARDにおいて、オフィス統合ソフト部門で長年Microsoft Officeに次ぐ2位を獲得しています。また、中国国内では国家レベルの賞も受賞しており、高い評価を得ています。

WPS Officeの起源は、1989年に中国でリリースされたワープロソフト「WPS 1.0」に遡ります。Windows 95の登場によりMicrosoft Officeが台頭するとシェアを大きく落としましたが、Microsoft Officeに操作性を近づけたWPS Office 2005のリリースを機に、シェアを回復させました。

アメリカにおける使用制限騒動と中国における検閲

2021年、アメリカでは安全保障上の懸念からWPS Officeを含む中華系アプリの使用制限が検討されましたが、後に撤回されました。この騒動は、WPS Officeの知名度向上に繋がった側面もあります。

2022年には、中国でWPS Officeのクラウドストレージ上に保存された小説ファイルが検閲されアクセス不能になったという事例が報告されました。金山軟件は、中国のサイバーセキュリティ法に基づいた対応だと説明しており、公開を目的としたファイルに限って検閲が行われていると発表しています。日本国内のキングソフト株式会社が提供するクラウドサービスは、この検閲の対象外です。

日本におけるリリース履歴

日本市場では、Kingsoft Office 2007から始まり、KINGSOFT Office 2010、2012、2013、2016とバージョンアップを繰り返してきました。2016年にはグローバルブランド「WPS Office」にリブランドされ、2020年にはWPS Office 2が発売されました。WPS OfficeおよびWPS Office 2016はサポートを終了しており、セキュリティ上の脆弱性が公表されているため、使用は推奨されていません。

まとめ

WPS Officeは、Microsoft Officeとの高い互換性と手頃な価格、そして豊富な機能で多くのユーザーに支持されています。ただし、セキュリティやプライバシーに関する懸念事項も存在するため、利用にあたっては最新の情報を把握し、安全な利用を心がけることが重要です。

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