金山軟件

金山軟件有限公司：中国ソフトウェア業界の巨人

金山軟件有限公司は、中国を代表するソフトウェア開発企業の一つであり、用友軟件などと共に中国ソフトウェア市場を牽引しています。オフィスソフト、セキュリティソフト、辞書ソフトなど、幅広い製品群を展開し、中国国内のみならず、日本を含むグローバル市場にも進出しています。日本市場では、キングソフト株式会社がその事業を担っています。

歴史：香港金山公司からグローバル企業へ

金山軟件有限公司の起源は、1973年に張鎧卿氏によって設立された香港金山公司に遡ります。当初はPCの組み立てと販売を行っていましたが、1980年代以降、張鎧卿氏の息子である張旋龍氏が事業を引き継ぎ、ソフトウェア開発に注力する方向へ転換していきます。

転換期となったのは、求伯君氏が1988年に香港金山公司に参加した時です。求伯君氏は、後に中国で圧倒的なシェアを獲得するオフィスソフト「WPS」の開発を主導しました。深圳に開発部門を設立し、これが現在の金山軟件有限公司の礎となりました。WPS 1.0と漢字ROMは1989年に発売され、中国国内のワープロソフト市場を席巻しました。

その後、香港金山公司は1993年に北大方正集団公司と合併し、方正香港公司となりますが、求伯君は珠海金山電脳有限公司を設立。1994年には北京金山軟件有限公司が設立され、現在の金山軟件有限公司へと発展していきます。

1990年代後半以降は、ゲーム事業にも進出し、代表作であるロールプレイングゲーム「剣侠情縁」シリーズを発表。また、電子辞書ソフト「金山詞覇」もこの頃に開発され、現在も高い人気を誇っています。2000年にはインターネット通信販売サイトjoyo.comを運営開始（後にAmazon.comに売却）するなど、事業領域を拡大し続けてきました。

2007年には香港証券取引所に上場。その後も、金山网络（現Cheetah Mobile）や金山云（Kingsoft Cloud）などの新規事業を展開し、中国を代表するテクノロジー企業としての地位を確立しています。Cheetah Mobileは2014年にニューヨーク証券取引所に上場を果たしています。

主な製品：多様なニーズに対応する製品群

金山軟件有限公司は、オフィスソフト、セキュリティソフト、辞書・翻訳ソフト、ゲームソフトなど、多岐にわたる製品を開発・販売しています。

WPS Office

金山軟件有限公司の代表的な製品であるWPS Officeは、中国で圧倒的なシェアを持つオフィススイートです。個人向け無料版と、より高度な機能を備えた有償サブスクリプション版が提供されています。日本では「WPS Office 2」として販売されており、Microsoft Officeとの高い互換性から多くのユーザーを獲得しています。

金山毒霸（Kingsoft Internet Security）

高性能なアンチウイルスソフトとして知られる金山毒霸は、中国市場で高いシェアを誇ります。無料版と有償版が用意されており、それぞれ異なるニーズに対応しています。日本でも「Kingsoft Internet Security」として提供されています。

金山詞覇（キングソフト辞書）

金山詞覇は、中国語、日本語、英語などをサポートする電子辞書ソフトです。豊富な辞書データと使いやすいインターフェースが特徴で、Windows、Mac、モバイル端末など、幅広いプラットフォームに対応しています。

その他の製品

金山軟件有限公司は、上記以外にも、電子管理システム「金山政鷹」、翻訳ソフト「金山快譯」、タイピングソフト「金山打字」、そして「剣侠情縁」シリーズに代表されるゲームソフトなど、様々な製品を開発しています。

日本市場における展開：キングソフト株式会社

日本市場においては、キングソフト株式会社が金山軟件有限公司の製品を販売、サポートしています。WPS Office、Kingsoft Internet Securityなど、主要製品を日本向けにローカライズし、高い競争力を誇るオフィスソフトやセキュリティソフトとして、多くのユーザーに利用されています。

まとめ

金山軟件有限公司は、PC組み立て販売から始まり、オフィスソフト、セキュリティソフト、ゲーム、クラウドサービスまで事業を拡大してきた、中国を代表するソフトウェア企業です。その歴史と製品群は、中国のIT発展の歴史そのものを映し出していると言えるでしょう。今後も、グローバル市場における更なる成長が期待されます。

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