WRESAT

WRESAT：オーストラリア宇宙開発の黎明

オーストラリアの宇宙への第一歩は、WRESAT（ウィーザット）と呼ばれる人工衛星によって記されました。この衛星は、同国の宇宙開発における先駆者として、歴史にその名を刻んでいます。正式名称であるWeapons Research Establishment Satelliteは、衛星の製造を担ったWeapons Research Establishment（兵器研究所）の名に由来しています。

機体の構造と特徴

WRESATは、重さがおよそ45キログラムという比較的軽量な衛星でした。機体の形状は独特な三角錐をしており、高さは1.59メートル、底面の直径は1.76メートルを測りました。電力源はバッテリーのみで供給されるシンプルな設計となっており、これはミッション期間が比較的短かったことを示唆しています。また、この衛星の大きな特徴の一つは、打ち上げに用いられたロケットの最終段と分離せずに、結合したまま軌道に投入された点です。このロケットの第三段を含めた全体の長さは2.17メートルとなりました。

歴史的な打ち上げとミッション

WRESATの打ち上げは、1967年11月29日という記念すべき日に行われました。打ち上げには、アメリカ合衆国から提供されたスパルタロケットが用いられました。この協力体制は、当時の国際的な宇宙開発における連携の一例と言えます。

WRESATの主なミッションは科学観測でした。具体的には、太陽からの放射線や地球の大気圏上層部を観測することを目的としていました。高層大気の研究は、その後の宇宙機運用や地球環境の理解において重要な分野であり、WRESATはこの分野でのデータ収集に貢献しました。

衛星は打ち上げ後、約5日間にわたり観測データを地上へ送信しました。この期間中に得られたデータは、限られた時間ではありましたが、オーストラリアの研究者にとって貴重な知見をもたらしました。

ミッションの終焉

WRESATのミッションは、運用期間を終えた後、地球大気圏への再突入という形で幕を閉じました。大気圏への再突入は、1968年1月10日に発生しました。比較的に短い運用期間でしたが、WRESATはオーストラリアが自国の手で宇宙空間に到達した初めての事例として、科学技術の発展と宇宙への関心を高める上で計り知れない意義を持ちました。

WRESATの成功は、その後のオーストラリアの宇宙関連活動への道を切り開く一歩となり、同国の宇宙開発史における重要な節目として記憶されています。

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