WRISTOMO

WRISTOMO：世界初の腕時計型PHS端末

2003年、NTTドコモから発売されたWRISTOMOは、世界で初めて市販された腕時計型携帯電話として大きな注目を集めました。開発元のセイコーインスツル（SII）は、2001年のCESで発表した腕時計型端末のコンセプトモデルがCES大賞を受賞したことをきっかけに、商品化に向けた開発に着手。2002年にドコモに提案し、2003年の発売に至りました。

革新的な機構：Wrist Mount System

WRISTOMO最大の特徴は、その変形機構「Wrist Mount System（WMS）」です。時計の文字盤部分に配置されたメインディスプレイは、上下のリリースボタンを押すことで、腕時計形状から通話に適した形状へと瞬時に変化します。バンド上部にはスピーカー、下部にはマイク、十字キー、通話・終話ボタンが配置されており、受話器スタイルで通話したり、腕時計をつけたまま通話することも可能です。

腕のサイズ調整は、ヒンジ部の溝を専用工具で調整したり、マイク部のゴム製ターミナルを交換することで対応しました。3種類のターミナルが用意されており、幅広いユーザーに対応できる設計となっています。また、3気圧防水にも対応しています。

機能と通信

WRISTOMOは音声通話だけでなく、Compact NetFront搭載のcHTMLブラウザによるWeb閲覧や、パルディオメールの送受信といったデータ通信機能も備えていました。ただし、これらのデータ通信機能はNTTドコモとの契約時のみ利用可能で、他のPHSキャリアでは使用できませんでした。

ディスプレイの裏面には、充電端子とデータ同期用の端子が備えられており、専用のシンクロケーブルまたはPHS回線経由で、PC上のOutlookと電話帳やスケジュールデータを同期することができました。

販売と歴史

WRISTOMOは、当初ドコモショップでの販売はなく、特設サイトでの限定販売が実施されました。価格は3万7000円でしたが、初回ロットの1000台はわずか10分で完売。その後、1万9800円に値下げされ、一部のドコモショップでも販売されるようになりました。

WRISTOMOは、ドコモPHS部門における最後の音声タイプ端末であり、セイコーインスツルにとってもドコモPHS部門向けの最初の、そして最後の端末となりました。その優れたデザインとWMSは、2003年度グッドデザイン賞を2つ受賞しています。

発売後、PHSサービスの終了や制御チャネル移行によって、2012年5月以降は利用できなくなりました。しかし、発売当時、そして現在においても、日本で市販された唯一の腕時計型PHSとして、その存在感は非常に大きいと言えるでしょう。

技術基準と認定

WRISTOMOは、発売前に下記の審査・認定を受けています。

2003年1月16日 - 技術基準適合証明 (TELEC) 審査通過 (証明記号: JZAA1089)
2003年2月25日 - JATE（財団法人電気通信端末機器審査協会）審査通過 (認定番号:A03-0015JP)
2003年3月26日 - 開発発表
2003年5月7日 - 販売開始

サービス終了

2004年2月1日 - 関東甲信越のドコモショップで販売開始
2004年7月末 - WRISTOMO公式サイト(http://www.wristomo.com/)終了
2008年1月7日24時 - ドコモPHSサービス終了 (ウィルコムとの契約で通話機能は継続利用可能)
2012年5月 - PHS制御チャネル移行に伴い利用不可能に

WRISTOMOは、その革新的なデザインと機能で、携帯電話の歴史に名を刻んだ製品と言えるでしょう。

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