WebDAV

WebDAV（Web-based Distributed Authoring and Versioning）は、HTTPプロトコルを拡張することでWebサーバー上のファイル管理を可能にする分散ファイルシステムプロトコルです。従来のFTPやSCPといったプロトコルを用いることなく、HTTPのみでファイルのコピー、移動、削除、属性の変更といった操作を直接Webサーバーに対して行うことができます。

WebDAVの機能と利点

WebDAVの主要な機能は、ファイルやディレクトリの操作をHTTPリクエストで行うことです。具体的には、ファイルのアップロード、ダウンロード、コピー、移動、削除、属性の変更などが可能です。ファイルのバージョン管理機能も当初は含まれていましたが、現在はRFC 3253で定義されたDelta-Vという別プロトコルに分割されています。

WebDAVの大きな利点は、HTTPのみでファイル管理が完結することです。そのため、FTPやSCPなどのプロトコルを必要とせず、ファイアウォールやHTTPプロキシを経由した環境でも利用できます。これは、セキュリティ上の制限がある環境や、複数のネットワーク環境を跨いでのファイル共有において大きなメリットとなります。

WebDAVの主要なメソッド

WebDAVはHTTP 1.1を基盤としており、それに加えて以下の独自メソッドを定義しています。これらのメソッドはHTTPヘッダーで指定され、ボディ部はXML形式でデータがやり取りされます。

PROPFIND: リソースの属性を取得します。クライアントは取得したい属性を指定し、サーバーはそれに対応する属性値を返します。全属性の取得も可能です。
PROPPATCH: リソースの属性を設定または削除します。
MKCOL: 新しいコレクション（ディレクトリ）を作成します。
COPY: リソースを別の場所にコピーします。
MOVE: リソースを別の場所に移動します。
LOCK: リソースにロックをかけます。共有ロックと排他ロックが利用可能です。
* UNLOCK: リソースのロックを解除します。

WebDAVの実装例

WebDAVは多くのWebサーバーやクライアントソフトウェアでサポートされています。サーバー側では、Microsoft IIS、Apache HTTP ServerなどがWebDAVをサポートしています。クライアント側では、Windowsのエクスプローラー（ただし、2023年11月現在、MicrosoftはWebDAVを非推奨としており、標準での利用は不可となっています）、macOSのFinder、UNIX系のGNOMEデスクトップ環境などがWebDAVクライアント機能を備えています。また、様々なプログラミング言語用のクライアントライブラリも存在します。

WebDAV関連の規格

WebDAVは、CalDAV（カレンダーデータの共有）やCardDAV（連絡先データの共有）といった、他の規格の基盤としても利用されています。

WebDAVの現状と課題

WebDAVは長年にわたって利用されてきましたが、近年ではより新しい技術が登場しており、その利用は減少傾向にあります。特に、Microsoftによる非推奨化は、WebDAVの将来に大きな影を落としています。しかしながら、既存のシステムとの互換性や、特定の用途における利便性から、依然としてWebDAVが利用されているケースも多く見られます。

まとめ

WebDAVは、HTTPを拡張したシンプルなプロトコルでありながら、Webサーバー上のファイル管理を効率的に行うことができます。しかし、Microsoftによる非推奨化や、より新しい技術の登場により、その将来性は不透明な部分も残っています。既存システムとの互換性や、具体的な利用用途を考慮した上で、WebDAVの採用を検討することが重要です。

もう一度検索