WordStar

WordStar：伝説のワープロソフト

WordStarは、マイクロプロ・インターナショナル社が開発したワープロソフトであり、1970年代後半から1980年代半ばにかけて、世界中のパソコンユーザーを席巻しました。テキストベースのシンプルな設計ながら、その高い機能性と操作性の良さは、多くの文筆家やビジネスパーソンを魅了したのです。この記事では、WordStarの輝かしい歴史、革新的なインターフェース、そして現代に残る影響までを詳しく探っていきます。

誕生と隆盛：CP/MからMS-DOSへ

WordStarの開発は、1976年にロブ・バーナビー氏によるCP/M向けテキストエディタ「WordMaster」から始まりました。このエディタは、後のWordStarの操作体系とよく似たもので、高い評価を得ていました。そして1978年、WordStarはCP/M環境でリリースされると、その洗練された機能性と使いやすさで瞬く間にデファクトスタンダードとなりました。1981年には、ポータブルコンピュータ「Osborne 1」へのバンドルも実現し、その普及にさらに拍車をかけました。

MS-DOSが台頭すると、WordStarも迅速にMS-DOS版に移植されました。1982年4月にリリースされたDOS版WordStar 3.0は、CP/M版とほぼ同じ操作性でありながら、IBM PCの機能も活用。既存のユーザーにとってスムーズな移行を可能にしました。このDOS版も、PC/AT互換機|PC_AT互換機に限らず幅広いx86マシンに対応していた点が大きな特徴です。当時、メモリ空間を最大限に活用するテクニックもユーザーによって開発され、WordStarの処理速度向上に繋がりました。

競合と進化：WordStar 2000とNewWord

WordStarは、WordPerfectやMicrosoft Wordといった強力なライバルが登場する中で、1980年代中盤までは市場を支配していました。しかし、マイクロプロ社が従来の操作体系を大きく変えたWordStar 2000をリリースしたことで、既存ユーザーからの反発を招き、市場シェアを徐々に失うことになります。

転機となったのは、1986年のNewWordのコード取得でした。NewWordは、ピーター・ミーロー氏率いるNewStar社が開発したWordStarクローンであり、その洗練されたコードはWordStarのバージョンアップに大きく貢献。WordStar Professional 4.0以降は、NewWordのコードをベースに、様々な新機能が追加され、失われたシェアの回復を目指しました。しかし、社内での開発体制の混乱や、Windowsへの対応の遅れなどが、WordStarの衰退を加速させる要因となりました。

独自のインターフェースと機能

WordStarは、その独特のインターフェースでも知られています。コントロールキーと組み合わせたコマンド体系は、慣れるまでは複雑でしたが、熟練すれば効率的な文章作成を可能にしました。一見非直感的な操作性も、多くのユーザーがその強力な機能性と操作性の高さに魅了された理由の一つと言えるでしょう。

WordStarには、MailMerge（大量印刷機能）、SpellStar（スペルチェック機能）、DataStar（データ管理機能）といったアドオンソフトも用意され、当時のオフィス環境に大きな変革をもたらしました。これらの統合された機能は、後のオフィススイートの先駆けとして高く評価されています。

著名な愛用者と文化

WordStarは、多くの著名な文筆家や知識人に愛されました。保守系評論家のウィリアム・F・バックリー・ジュニア氏やSF作家のジョージ・R・R・マーティン氏、アン・ライス氏などが熱心なユーザーとして知られています。また、WordStarユーザーによるコミュニティも存在し、長年に渡り活発な情報交換が行われていました。このことは、WordStarが単なるソフトウェアを超えた、一つの文化を形成していたことを示しています。

現代への影響

WordStarは既に開発を終了していますが、その影響は現代のワープロソフトやテキストエディタにも色濃く残っています。多くのソフトウェアで、WordStarのコントロールキーを使ったコマンド体系がエミュレートされているのは、その証拠と言えるでしょう。また、WordStar独特のファイルフォーマットをサポートするソフトウェアも存在し、その歴史的価値が今もなお認識されていることを示しています。

結語

WordStarは、そのシンプルな設計と革新的な機能、そして熱心なユーザーによって支えられた独自の文化によって、ワープロソフトの歴史に大きな足跡を残しました。その存在は、現代の私たちが利用するソフトウェアの進化に大きく貢献したと言えるでしょう。WordStarの物語は、技術革新の歴史と、ソフトウェアが社会に与える影響の大きさを改めて示す、貴重な事例となっています。

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