WorldWideWeb

WorldWideWebとは

WorldWideWebは、ティム・バーナーズ＝リーによって開発された世界初のウェブブラウザであり、同時にWYSIWYGのHTMLエディタでもありました。当初はWorldWideWebという名称でしたが、後にWorld Wide Webとの混同を避けるためNexusと改称されました。このブラウザは、当時ウェブを閲覧するための唯一の手段であり、その歴史的意義は非常に大きいと言えるでしょう。

開発の歴史

1990年後半、CERNに勤務していたバーナーズ＝リーは、NeXTのコンピュータ上でWorldWideWebの開発を開始しました。1990年12月25日には最初のビルドが成功し、その後もバーナーズ＝リーや他の開発者たちが修正とビルドを繰り返しました。1991年8月には、インターネットのニュースグループで公開されました。

開発には、Bernd Pollermann、ロバート・カイリュー、Jean-Francois Groff、そしてラインモードブラウザを開発したNicola Pellowなどが参加しました。NeXTのシステムから他のOSへの移植は困難だったため、編集機能を省いた「パッシブ・ブラウザ」も開発されました。X Window Systemへの移植も、チーム内に経験者がいなかったため実現しませんでした。

バーナーズ＝リーとGroffは、WorldWideWebの多くのコンポーネントをC[[言語]]で書き直し、libwww APIを作成しました。ViolaWWWのような初期のブラウザも存在しましたが、1993年にはNCSA Mosaicがそれらに取って代わる存在となりました。その後、WorldWideWebの開発に携わった人々は、HTMLや通信プロトコルの標準化など、ウェブ開発の基礎となる部分の開発へと移行していきました。

1993年4月30日、CERNはWorldWideWebのソースコードをパブリックドメインとして公開し、自由ソフトウェアとして利用可能になりました。いくつかのバージョンは、evolt.orgのブラウザアーカイブからダウンロードできます。バーナーズ＝リーは当初GPLライセンスでのリリースを考えていましたが、商用利用も考慮してパブリックドメインとしました。

技術的特徴

WorldWideWebは、NeXTSTEPプラットフォーム上で開発されたため、プログラムはNEXTSTEPのコンポーネントを利用しています。例えば、レイアウトエンジンはNEXTSTEPのTextクラスを活用しています。

機能

WorldWideWebは、基本的なスタイルシートの表示に対応していました。また、NeXTシステムがサポートするあらゆるファイルタイプ（PostScript、動画、音声）をダウンロードしたり、開いたりすることができました。ニュースグループの閲覧やスペルチェックも可能です。初期には、画像は別ウィンドウで表示されていましたが、後にNEXTSTEPのTextクラスが画像オブジェクトをサポートするようになりました。

このブラウザは、WYSIWYGエディタとしても機能しました。複数のウィンドウでウェブページを表示しつつ、同時に編集やリンクの設定が可能です。「Mark Selection」機能でアンカーを生成し、「Link to Marked」機能で選択したテキストを直近にマークしたアンカーとリンクできます。ただし、HTTP PUTメソッドが未実装だったため、リモートからのページ編集はできませんでした。編集はローカルファイルシステム内で行い、HTTPサーバーを通じてウェブとして公開する形式でした。

操作パネルには、「Next」と「Previous」ボタンがあり、最後に見たページの次か前のリンクをたどることができます。これはOperaのRewindとFast Forwardボタンに似た機能です。当時、多くのページが一覧形式でリンクされていたため、この機能は非常に便利でした。しかし、ウェブが成長するにつれて、このようなリンク構造は一般的でなくなり、この機能は他のブラウザでは見られなくなりました。

WorldWideWebにはブックマーク機能はありませんでしたが、代わりにユーザーのホームページにリンクを保存する方法で似たような機能を実現していました。ホームページを階層化することで、フォルダのようにブックマークを整理することもできました。

WorldWideWebは、FTP、HTTP、NNTPといった複数のプロトコルに対応しており、URLを使ってローカルファイルも扱うことができました。

名称について

バーナーズ＝リーは、当初「The Mine of Information」や「The Information Mesh」という名称を提案していましたが、最終的にWorldWideWebが採用されました。

まとめ

WorldWideWebは、現代のウェブブラウザの基礎を築いた歴史的なソフトウェアです。WYSIWYGエディタとしての機能や、複数のプロトコルに対応したことなど、今日のブラウザにも通じる多くの特徴を持っていました。そのソースコードがパブリックドメインとして公開されたことは、ウェブの発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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