X線分光撮像衛星

XRISM（X線分光撮像衛星）について

XRISM（クリズム）は、日本の宇宙航空研究開発機構（JAXA）が開発した最新のX線天文衛星です。この衛星は、2016年に運用終了したX線天文衛星「ひとみ」の後継機として位置づけられ、アメリカ航空宇宙局（NASA）および欧州宇宙機関（ESA）との国際協力によって実施されています。特に、XRISMはNASA主導でのプロジェクトとして進められています。

XRISMは、2023年9月7日の午前8時42分11秒に、鹿児島県の種子島宇宙センターよりH-IIAロケット47号機で打ち上げられました。打ち上げ成功により、衛星は14分後に軌道に投入され、搭載していた小型月着陸実証機SLIMも無事に軌道に載せられました。

概要

この衛星の開発段階では「X線天文衛星代替機（XARM）」という仮称が使用されていましたが、プロジェクトの移行に伴い「X線分光撮像衛星」と改称されました。日本の他の人工衛星と同様に、名称の公募を行うか否かはまだ決まっていません。XRISMは、「ひとみ」に搭載された硬X線関連や軟ガンマ線観測機器を載せず、軟X線に特化した設計となっています。

ミッションの目的

この衛星のミッションは主に以下の3つです：
1. 銀河団の圧力バランスを調査し、その構造形成の歴史を明らかにすること。
2. 宇宙における化学組成の進化を追跡すること。
3. ブラックホール周辺での物質の動きを観測し、一般相対論的な時空構造を解明すること。

これらの研究は、宇宙に対する理解を深める上で重要な役割を果たします。

設計と観測機器

XRISMの観測機器には、2台の軟X線反射鏡の焦点面に搭載されたX線マイクロカロリメータ分光撮像器（Resolve）と広視野X線CCDカメラ（Xtend）が含まれています。特にResolveは、NASA、ESA、オランダのSRONによって開発されたものです。

スラスタ噴射異常への対策

XRISMは、「ひとみ」で発生したスラスタ噴射異常への対策を徹底しています。異常発生のリスクを軽減するため、特にスラスタが異常を起こした場合の措置が追加されました。設計の範囲を超える要因による異常が起こった場合には、衛星の回転が一定の閾値を超えた際にスラスタ噴射を停止する機能を追加することで、衛星の信頼性が向上されています。

ミッション機器の不明事象

XRISMのミッション機器の試験中には、不明な事象が発生し、原因作業と対策検討に多くの時間がかかりましたが、これらの問題も解決に向かっています。

打ち上げの経緯

当初、2021年度中に小型月着陸実証機SLIMと共に打ち上げる予定でしたが、さまざまな理由で何度か延期され、最終的には2023年9月7日に成功裏に打ち上げられました。打ち上げに関する延長は、テスト機や天候などさまざまな要因によるものでした。

運用状況

2023年9月11日には、クリティカル運用期間が終了し、次のステージであるコミッショニング期間に移行しました。2024年1月5日には、初観測データが公開されましたが、Resolveの保護膜が閉じた状態であったため、当初の予定性能が達成できない課題が残っています。9月20日には観測成果が報告され、依然としてResolveの保護膜が閉じた状態であると説明されています。

XRISMの今後の活動と成果が期待される中、宇宙科学の分野での新たな知見に貢献することが目指されています。

もう一度検索