X-23 (航空機)

X-23 PRIME

X-23 PRIMEは、アメリカ空軍が1960年代に推進した、将来的な宇宙船の大気圏再突入と地上への正確な帰還技術を実証するための無人試験機プログラムです。特に、機体そのものが揚力を発生させるリフティングボディ形状の航空宇宙機の実用化に向けた重要なステップとして位置づけられていました。

開発経緯と機体概要

本計画は1964年にスタートし、航空宇宙メーカーであるマーチン社が機体製造を担当しました。社内ではSV-5D、あるいは「精密再突入操縦回収」を意味するPRIME (precision recovery including maneuvering entry)という名称でも呼ばれていました。

X-23は、文字通り胴体が生み出す揚力を利用して大気圏を滑空するリフティングボディ形状を特徴としています。機体後部には姿勢制御や空力制御のためのフラップと垂直尾翼が備わっていましたが、自力で飛行するための主動力は搭載していません。極超音速での大気圏突入時に発生する猛烈な空力加熱に耐えるため、機体構造にはチタン、ベリリウム、ステンレス、アルミ合金といった耐熱性の高い素材が多用され、特に機体先端部には炭素繊維が使用されていました。

姿勢制御システムとしては、大気圏外での姿勢調整に用いる窒素ガス噴射式のリアクション・コントロール・システム（RCS）と、大気圏突入後の空力飛行を制御するための舵翼が組み合わされていました。

試験計画と回収手順

X-23の試験は、アトラスSLV-3ロケットによって高高度へ打ち上げられることから始まりました。目標軌道に到達した後、機体はロケットから分離され、単独で大気圏への再突入を開始します。再突入時は、舵翼を用いて空力的に姿勢を制御しながら降下し、速度がマッハ2程度まで低下した段階で、まず減速用のバリュート（誘導落下傘）を展開してさらに速度を落としました。

最終的な回収段階では、大型のパラシュートを展開して降下速度を十分に緩め、待機していたHC-130B改修型のJC-130B航空機によって、空中でのキャッチングにより回収される計画でした。これは、地上への衝撃着陸を避けるための先進的な回収方法でした。

当初、この計画のために4機のX-23機体が製造される予定でした。

試験結果

製造された機体による実際の試験飛行は以下の通り行われました。

1号機: 1966年12月21日、ヴァンデンバーグ空軍基地から初打ち上げが行われましたが、残念ながら最終段階の主パラシュート展開に不具合が生じ、太平洋上へ墜落し失われました。
2号機: 1967年3月5日に打ち上げられました。こちらも1号機と同様にパラシュートシステムのトラブルが発生し、太平洋への着水・喪失となりました。
3号機: 1967年4月19日に打ち上げられたこの機体は、計画された大気圏再突入、空力制御、そして最終的な空中回収の全てに成功しました。これは、リフティングボディ機の回収技術実証において大きな成果となりました。
4号機: 当初の計画には含まれていましたが、先行した3機での試験結果を踏まえ、打上げはキャンセルされました。

現状

回収に成功した唯一の機体である3号機は、現在、アメリカ合衆国の国立アメリカ空軍博物館に収蔵・展示されており、当時の先進的な航空宇宙技術開発の歴史を物語っています。

要目

X-23 PRIMEの公表されている要目は以下の通りです。

全長：2.07メートル
全幅：1.16メートル
全高：0.64メートル
重量：405キログラム

X-23計画によって得られたデータと知見は、その後の様々なリフティングボディ研究や、スペースシャトルなどの再使用型宇宙往還機開発に重要な貢献を果たしました。

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