炭素繊維

炭素繊維の概要

炭素繊維は、アクリル繊維やピッチ（石油、石炭、コールタールの副産物）を高温で処理して得られる繊維材の一種です。その特徴は軽量でありながら、非常に高い強度を持つ点にあります。日本工業規格（JIS）によると、炭素繊維は質量比で90%以上が炭素で構成され、主に合成樹脂などの母材と組み合わさった複合材料として使用されます。

特徴

炭素繊維の主な長所は「軽くて強い」ことであり、これにより様々な分野で利用されています。鉄と比べると、比重は約1/4、比強度は約10倍、また比弾性率はおよそ7倍と、非常に優れた特性を誇っています。さらに、耐摩耗性、耐熱性、耐酸性なども持ち合わせています。しかし、製造コストが高く、加工する際の難易度やリサイクルの困難さといった短所も存在します。特に、炭素繊維の異方性から、使用形態によって破損の判断が難しくなるため、注意を要します。

歴史

炭素繊維の始まりは1959年に遡ります。当時、ユニオン・カーバイドの子会社がレーヨンを用いて世界初の炭素繊維を開発しました。その後、日本では1961年に進藤昭男がPAN系炭素繊維を発明し、1963年には大谷杉郎がピッチ系炭素繊維を生み出しました。1970年代からはその特異な強度を活かし、複合材料の主原料として需要が高まりました。1980年代には製造プロセスの改善が進み、ロケットや航空機、さらにはスポーツ道具と広範囲にわたる用途に用いられるようになりました。

PAN系炭素繊維

PAN系炭素繊維は、特にその優れた特性から人気があります。製造過程では、アクリロニトリルからポリアクリロニトリル繊維が生成され、その後高温で処理されます。この繊維のサイズは通常5-7µmで、24,000本以下の束を「レギュラートウ」、40,000本以上の束を「ラージトウ」と呼びます。前者は軽量で高弾性率を持つため、航空機やゴルフ用品に多く使用され、後者はコストパフォーマンスが高いため、主に産業用途に利用されています。

ピッチ系炭素繊維

ピッチ系炭素繊維は、主に7-10µmの単繊維から構成されます。原料によって等方性ピッチ系とメソフェーズピッチ系に分かれ、前者は優れた柔軟性と耐熱特性を持ち、主に工業用途に使用されます。後者は高い弾性率を持ち、特に工業的な要求に応えるための用途に適しています。

労働安全衛生

炭素繊維関連の製造・加工においては、長期間の健康リスクが指摘されています。特定の多層カーボンナノチューブが健康障害のリスク要因として挙げられ、必要な安全対策の実施が求められます。また、粉塵の管理も重要で、適切な保護具の着用が推奨されます。これによって作業環境を安全に保つことができます。

まとめ

炭素繊維はその優れた軽量性と強度から、多岐にわたる用途に供されており、近年では我々の生活に欠かせない存在となっています。その歴史と特性を理解することで、今後の発展に期待が寄せられています。

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