XF2Y-1 (航空機)

F2Y シーダート - 水上ジェット戦闘機の試作機

概要

F2Y シーダート（Convair F2Y Sea Dart）は、コンヴェア社が開発した試験的な水上ジェット戦闘機で、特に注目されたのは緩降下時に音速を超えた唯一の水上機である点です。愛称の「シーダート」は「海のダーツ」という意味であり、海軍内での制式名称はXF2Y-1及びYF2Y-1でした。XF2Y-1は初期試作機の1号機を指し、アメリカ海軍による制式名統一の際にはYF-7Aという名が与えられました。このため、F番号の7番目には当機が位置づけられることとなったのです。

開発背景

第二次世界大戦後、アメリカ海軍は水上戦闘機のジェット化を目指していました。これには、第2次大戦中に開発された艦上戦闘機が持つ発着艦能力と航続距離の不足を克服することが求められていました。特に、超音速機の出現による航空機の大型化や重量増加は、航空母艦や発着艦能力にとって大きな課題を生むものでした。そのため、海軍は新たなアプローチとして、飛行甲板を持たない水上機の開発に着手したのです。

1948年には、アメリカ海軍は「超音速飛行が可能なジェット水上戦闘機」の仕様を航空機メーカーに提示しました。コンベア社はこれに対しフロートを使用せず、水上スキーによる離着水が可能な機体を提案し、2001年にF2Y開発計画が始まりました。設計は、著名なドイツの航空技術者リピッシュ博士の協力を得て進められました。

試験機の設計・性能

1952年12月に試作1号機のXF2Y-1が完成し、翌月から水上滑走テストが開始されました。1953年には、高速滑走中において約1000フィートの高さまで浮上したものの、これは公式な初飛行とは認定されませんでした。初飛行が実現するまでに、搭載されていたJ34ターボジェットエンジンの性能が不十分であったため、アフターバーナー付きのXJ46試作エンジンに換装されました。

1954年8月、XF2Y-1は緩降下時ながらも音速突破に成功します。これが今日においても水上機として唯一の記録です。ですが、音速を超えることができたものの、高速飛行時のマッハ1.5の性能を実現することは構造上難しいという問題が残りました。

開発の難題と計画の終焉

XF2Y-1が音速突破に成功したものの、水上滑走中の衝撃が大きく、開発は困難を極めました。また、耐波性の問題から外洋での使用には厳しい制約が伴い、この特性に疑問が呈されることになります。1954年、1号機はデモフライト中の事故で空中分解し、テストパイロットが死亡するという悲劇に見舞われました。それにより、計画の見直しが余儀なくされ、初期の生産計画も縮小されてしまいました。

1956年には、空母の発着艦技術が進歩し、これが水上機の必要性を薄れさせる結果となりました。F2Yの開発は中止され、わずか5機が生産されたものの、飛行可能な状態の機体は2機だけでした。現在、いくつかの試作機がアメリカ各地で展示されていますが、これは水上戦闘機としての野心が実現しなかったことを印象づけています。

機体の概要

F2Y シーダートは独特な無尾翼のデルタ翼を持つ双発ジェット機です。主翼は60度の後退角を持ち、機体の底部はV字型の艇体を採用しており、エンジンの空気取り入れ口は水を吸い込まないように工夫されています。具体的には、引き込み式の水上スキーを用いた離着水装置が装備され、当初は2枚のスキーが用いられていましたが、後に1枚に変更されました。

スキー装置は柔軟な離着水を実現し、油圧式の衝撃吸収装置も搭載されているため、着水時の衝撃を軽減する設計となっています。F2Yは武装も計画されており、量産時には20mm機関砲4門の搭載が予定されていましたが、この計画は実現せずに終わりました。

このようにF2Y シーダートは、当時の水上戦闘機としての理想に挑戦した試みでありながら、その運用上の制約と不可解な事件により歴史の一端となったのです。

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