XLR50

GE X-405

GE X-405、アメリカ海軍分類ではXLR50-GE-2として知られるこのエンジンは、ゼネラル・エレクトリック社（GE）によって開発された液体燃料ロケットエンジンです。RP-1（ロケット用ケロシン）を燃料に、液体酸素を酸化剤として使用し、ガス発生器サイクル方式で推進剤を燃焼させました。推進剤はポンプによって燃焼室へ供給されるポンプ供給式を採用しています。

このエンジンは、アメリカ初の人工衛星打ち上げを目指したヴァンガード計画において、その心臓部ともいえる第1段ロケットの推進力として採用されました。

技術的特徴

X-405エンジンの設計には、第二次世界大戦中にドイツで開発されたV-2ロケットで培われた技術的知見が応用されています。特に、エンジンに推進剤を送り込むためのポンプを駆動するタービンは、過酸化水素（H2O2）を触媒によって分解し発生する高温の蒸気を利用して回る方式を採用していました。また、燃焼室の過熱を防ぎ、効率を高めるための冷却システムには、燃焼室の壁面を通して推進剤の一部を循環させる再生冷却方式が用いられています。

ロケットの飛行姿勢を制御する機能も備えており、エンジン自体がジンバル機構によって自由に角度を変えられるようになっていました。これにより、推力の向きを変えることで機体の姿勢を調整する推力偏向制御が可能でした。さらに、ポンプを回した後のタービン排気ガスも有効活用されました。このガスは専用のダクトを通ってノズルの外部に設けられた小型推進器へ送られ、ロケットの自転軸（ロール軸）の姿勢制御に役立てられています。

ヴァンガード計画における採用

ヴァンガードロケットの開発において、主契約者となったのはマーティン社でした。第1段エンジンを選定するにあたり、当初検討されていたヴァイキングロケットに使用されていた推進器（リアクション・モーターズ社製 XLR10）では、ヴァンガードに必要な十分な推力を得られないと判断されました。

そこで、複数の候補が検討された結果、GE社が過去のヘルメス計画で培った技術を基に提案したX-405エンジンが、リアクション・モーターズ社の次期開発計画案よりも現実的であり、開発リスクも少ないと判断されました。この決定を受け、マーティン社は1955年10月1日に正式な契約（契約番号55-3516-CP）をGE社と締結しました。この契約には、エンジン単体だけでなく、エンジンを支える推力構造体、ジンバルリング、各種部品、さらにはエンジン始動に必要な機器一式を含む、自己完結型のX-405エンジンシステム全体が含まれていました。

生産と運用実績

合計で12基のX-405エンジンが製造されました。ヴァンガードロケットの最初の2回の試験飛行では、暫定的にヴァイキングロケットの第1段が使用されましたが、その後、製造されたエンジンのうち11基が実際のヴァンガードロケットに搭載され、打ち上げに使用されました。

X-405エンジンは、ヴァンガード計画の成功に不可欠な要素であり、アメリカの初期宇宙開発史において重要な役割を果たしたエンジンの一つと言えます。

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