YF-12 (航空機)

YF-12の概要

YF-12は、ロッキード社がアメリカ空軍向けに開発した試作迎撃戦闘機です。この機体は、CIAが手がけた高機密の超音速戦略偵察機SR-71 ブラックバードの派生型に当たります。1950年代から1960年代にかけてアメリカ空軍が抱えた技術的課題を解決するためのプログラムの一環として誕生しました。

開発の背景

YF-12の開発は、1962年に初飛行を果たしたA-12 OXCARTプロジェクトの延長線上にあります。当初、アメリカ空軍はF-106 デルタダートの代わりとなる、マッハ3級を誇るXF-108 レイピアという迎撃戦闘機の開発を進めていましたが、その計画は中止されました。この背景にあったのは、当時求められていた速度と性能の実現が困難だったためで、これに伴いロッキードは代替機の開発を提案しました。

アメリカ空軍はA-12の生産ラインを活用し、YF-12の開発へ進むことを決定しました。主な変更点としては、火器管制レーダーの搭載や運転士用の第2コックピットの追加、ミサイルを搭載するために偵察装置を収納していたbayの改修が挙げられます。しかし、これによって航空機の安定性が問題視されることとなりました。

試験の経過と成果

YF-12Aは試験において数々の新記録を打ち立てるなど、非常に印象的な性能を示しました。具体的には、AIM-47ミサイルを用いた6回の発射テストが成功し、その最高高度は74,400フィートに達しました。こうした成果は、YF-12が有望な迎撃戦闘機であることを証明するものでした。

しかし、1965年にアメリカ空軍が93機のF-12Bを発注したものの、国防長官が予算削減を決定したため、計画はキャンセルされました。この決定の背景には、超音速迎撃戦闘機の開発を正当化するほどに当時のソビエト連邦が高速爆撃機を保有していなかったことが一因です。その後もYF-12はアメリカ空軍とNASAの研究機として活躍しました。

YF-12の製造状況と現況

YF-12Aは合計で3機が製造されましたが、その中で1機（60-6934）はエドワーズ空軍基地での事故によって大きな損傷を受け、修復不可能となりました。その残骸はSR-71Cに改造され、現在はユタ州の博物館に展示されています。残りの1機（60-6936）は燃料系統の不具合で失われ、現在唯一の生き残りである60-6935はオハイオ州のアメリカ空軍博物館に展示されています。

また、YF-12Cという名称を持つ機体も存在しますが、これはYF-12ではなく、NASAによって改称されたSR-71Aです。この機体は、NASAの目的のために使用され、現在はアリゾナ州のピーマ航空博物館に展示されています。

仕様

YF-12Aの基本的な仕様は以下の通りです：

• - 乗員: 2名
• - 全長: 30.97 m
• - 全高: 5.64 m
• - 翼幅: 16.95 m
• - 空虚重量: 27,604 kg
• - 最大速度: マッハ3.35
• - 航続距離: 4,800 km
• - 武装: AIM-47Aミサイル×3

YF-12は、技術的な成就と共に、今なお航空機開発史における重要な存在として語り継がれています。

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