YJ-91 (ミサイル)

YJ-91（鷹撃-91）ミサイル

YJ-91、中国語では鷹撃-91として知られるこの兵器は、中華人民共和国がロシア連邦のKh-31ミサイルを母体に開発した超音速ミサイルシステムです。これは単一の機能に特化せず、空対艦ミサイルとしても、また敵のレーダー波を捕捉・追尾してこれを破壊する対レーダーミサイルとしても運用可能な多目的ミサイルシステムとなっています。

開発の背景と戦略的重要性

中国人民解放軍がYJ-91の開発と配備を推進する背景には、将来的な軍事シナリオ、特に台湾周辺での作戦において、潜在的な敵対勢力からの攻撃に対処するという明確な意図があります。万が一、中国本土の主要都市である北京や上海が、アメリカ海軍の空母打撃群やアメリカ空軍基地から発進する航空機による空襲を受けた場合を想定し、YJ-91はそのような攻撃の要となる敵部隊の無力化を目指します。

具体的には、敵の空母打撃群が持つイージスシステムや、空軍基地を防衛するパトリオットミサイルといった防空・対ミサイルシステムを制圧することを目的としています。これらのシステムが機能不全に陥れば、敵の空襲能力は著しく低下し、中国側は攻撃の停止や撃退を図ることが可能となります。この戦略的な必要性に基づき、中国はKh-31のライセンス生産権を獲得し、YJ-91として国産化を進め、有事に備えた大量の備蓄に努めているとされています。

Kh-31の対レーダーミサイル型であるKh-31Pは、その高い制圧能力から「神盾殺手」、すなわち「イージス艦キラー」という別名でも呼ばれることがあります。これは、イージス艦の強力なレーダーシステムをも標的にできることを示唆しており、YJ-91の対レーダー能力の脅威を物語っています。

バリエーションと能力

YJ-91の原型であるKh-31には、主に二つの異なるタイプが存在し、YJ-91もこれらを基にしたバリエーションを持つと考えられます。一つは対艦ミサイル型のKh-31Aで、これはアクティブ・レーダー・ホーミング（ARH）方式を採用し、目標とする艦艇に搭載されたレーダー波ではなく、ミサイル自身が発するレーダー波で目標を捉えて飛翔します。Kh-31Aの射程は約50kmとされています。

もう一つは対レーダーミサイル型のKh-31Pです。こちらは敵が発するレーダー波を逆探知し、その発生源を目指して飛翔します。西側諸国が運用するAGM-88 HARMのような対レーダーミサイルに分類されますが、Kh-31Pは約110kmというHARMを凌駕すると解釈される長大な射程を持ちます。

興味深いのは、これらKh-31AとKh-31Pが、同じ機体構造（エアフレーム）と推進システム（プロパルジョントレイン）を持ちながら、射程が大きく異なる点です。これは、それぞれのミサイルが飛行する経路や高度、速度といった「フライトプロファイル」が大幅に異なることを強く示唆しています。

技術的特徴

YJ-91/Kh-31ミサイルの最大の特徴は、その推進システムにあります。これは「インテグラルロケットラムジェット」と呼ばれる形式に類するラムジェットエンジンを搭載しています。発射後、まず内蔵された固体ロケットブースターが点火され、ミサイルを超音速まで加速させます。その後の超音速巡航段階では、ブースターが燃焼終了または排出され、空気が吸気口からエンジン内部に取り込まれて燃焼に利用されるラムジェットエンジンが作動します。

このラムジェットエンジンの効率的な運用により、YJ-91は超音速での長距離飛行を可能にしています。公式データや分析によると、その飛行速度は高高度ではマッハ4.5にも達し、海面上といった密度の高い低高度でもマッハ2.7という高速を発揮できます。エンジンの作動条件の幅が広いことも、多様なフライトプロファイルに対応できる理由の一つと考えられます。

機体の外形も特徴的です。ミサイルの後部には安定性を確保するためのX字状に配置された4枚の安定フィンが見られます。また、ラムジェットエンジンへの空気を取り込むための方形の空気取り入れ口が、機体の左右にそれぞれ二つずつ、合計四ヶ所に配置されています。

配備状況

YJ-91の具体的な配備状況は必ずしも全てが公表されているわけではありませんが、既知の情報としては、2016年には西太平洋の南シナ海におけるベトナム沖合、西沙諸島（パラセル諸島）において、中国が建設を進めていた人工島上の海上要塞にこのミサイルが配備されたことが確認されています。

結論

YJ-91は、中国人民解放軍が現代の国防戦略において重要視する超音速ミサイル戦力の一角を担っています。原型であるロシアのKh-31から受け継いだ高性能なラムジェットエンジンによる超音速性能と、対艦および対レーダー能力という多機能性を兼ね備えることで、敵の防空・対ミサイルシステムを突破し、あるいは無力化する能力を持ちます。特に「イージス艦キラー」とも称される対レーダーミサイル型は、高度にネットワーク化された現代海軍の戦闘能力に対する直接的な脅威となり得ます。中国は今後もこのミサイルの能力向上や配備を進めるものと考えられ、アジア太平洋地域の安全保障環境において注目される存在です。

すべき存在であり続けます。

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