YO-3A (航空機)

YO-3A: 静音型観測機の特徴と戦歴

YO-3Aは、アメリカのロッキード社が開発した特異な設計の観測機で、ベトナム戦争中に主に戦場偵察任務を果たしました。その愛称は「クワイアト・スター」という意味の“静かな星”に由来し、特に静粛性を重視して作られています。この機体は、ほぼ無音に近い状態でゲリラ部隊を監視するため、数時間飛行する能力を持っていました。

設計と製造背景

1965年、アメリカ陸軍は「400mの高度で飛行していると、地上から音響的に検知されない」という要求を提示しました。この要件を基に、ロッキード社の宇宙・ミサイル部門は1966年に試作機「クワイアト・スラスター」を二機製作。これらの試作機は、シュバイツァーSGS2-32グライダーの機体を改良し、特別に設計した静音性の高いエンジンと亜音速で運行するプロペラを搭載しました。この段階で得られた技術を活かし、最終的に14機のYO-3Aが製造されました。

これらの機体は、プロペラの静音化のためにベルト駆動方式の特別なプロペラや、高温の排気が外に漏れない様に設計された排気システムを装備し、遭遇する敵に発見されにくい特性を持っています。また、一部の機体には赤外線照射器やレーザー目標照射機が装備され、特殊任務用として利用されました。

ベトナム戦争での運用

「プライズ・クルー」計画の一環として、YO-3Aはベトナムに派遣され、夜間の低高度ミッションに重点を置きました。地上では、手持ちの暗視装置を用いて監視を行い、その成果をあげました。YO-3Aは通常、約300mの高度で飛行し、一部のパイロットは敵に察知されることなく約60mまで降下したと言われています。その飛行音は、地上からは「鳥の群れ」のようにしか聞こえなかったとされています。

戦後の活動と後の使用

ベトナム戦争が終了した後も、YO-3Aは活躍を続けました。2機の機体がルイジアナ州で密漁者の摘発に利用され、FBIが誘拐犯や強盗を捕らえるために数年間運用しました。さらに、NASAも1970年代後期に1機を導入し、回転翼航空機の研究に使用しました。この機体はカリフォルニアのモフェットフィールドで現在も運用されています。

現存機

現在も残っているYO-3Aの1機（シリアル69-18007）は、カリフォルニア州アップランドのケーブル空港に保管され、一部で再整備が進められています。静音型の観測機としての特異な役割が評価され、航空機史における重要な存在となるでしょう。

性能と技術的諸元

• - 乗員：2名（タンデム）
• - 全長：8.94m（29フィート4インチ）
• - 全幅：17.37m（57フィート）
• - 最大離陸重量：1,724kg（3,800ポンド）
• - エンジン：コンチネンタルIO-360D（210hp×1）
• - 最大速度：221km/h（M0.18、138mph）

参考文献

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