ZBar

ZBarは、画像ファイルやビデオストリームに含まれるバーコードやQRコードといった二次元コード情報を、コンピュータが識別し、内容を読み取れるようにするためのソフトウェアライブラリです。自由な利用とソースコードの公開が特徴のオープンソースプロジェクトとして開発されており、様々な種類のコードフォーマットに対応しています。ソフトウェア開発者が自身のプログラムにバーコード認識機能を組み込む際の基盤として、幅広い分野で活用されています。

このライブラリの主要部分は、パフォーマンスと移植性の高さからC言語で実装されています。これにより、ZBarは様々なオペレーティングシステムやハードウェア環境で効率的に動作します。さらに、多くの一般的なプログラミング言語（例: Python, Perl, Ruby, Javaなど）からZBarの機能を利用できるように、対応する言語バインディングが豊富に提供されています。これにより、開発者は自身の使い慣れた言語でZBarを統合することが可能です。また、グラフィカルユーザーインターフェースを持つアプリケーションに組み込みやすいよう、QtやGTK+といった主要なウィジェット・ツールキット向けのバインディングも開発されています。

ライブラリとしてだけでなく、ZBarはその機能を活用するためのスタンドアロンのツールも提供しています。具体的には、静止画像ファイルを処理する「zbarimg」や、カメラからの入力映像をリアルタイムで解析する「zbarcam」といったコマンドラインユーティリティがあり、これらはクロスプラットフォームに対応しています。さらに、モバイルデバイスでの利用例として、かつてはiPhone向けのアプリケーションも存在しました。

ZBarの核となる機能は、画像データの中からバーコードやQRコードのパターンを検出し、その中にエンコードされた情報を正確にデコードすることにあります。対応するコードの種類は多岐にわたり、一般的な一次元バーコード（EAN, UPC, Code 128など）や、二次元コードの代表格であるQRコードの認識が可能です。特にビデオストリームからのリアルタイムスキャン機能は強力で、動的な環境でのコード読み取りに威力を発揮します。

ZBarプロジェクトは当初、SourceForgeというオープンソースソフトウェアのためのホスティングサイト上で開発が進められていました。しかし、2009年10月にリリースされたバージョン0.10を最後に、残念ながらプロジェクトの主要な開発活動は事実上停止してしまいました。多くのユーザーがこのライブラリの継続的な改善を望む中、コミュニティの活動として、2017年3月にオリジナルのソースコードから新しい開発ブランチとして「フォーク」が行われました。このフォーク版プロジェクトは、停滞していた期間の技術的な進歩を取り込み、ライブラリの現代化と機能強化を目的としています。具体的には、最新のデスクトップ環境で広く利用されているQt 5フレームワークへの対応や、Linux環境でビデオデバイスへのアクセスを容易にするlibv4lライブラリのサポート、さらにLinuxの標準的なビデオ入出力インターフェースであるVideo4Linux APIバージョン2への対応強化などが図られました。現在、このフォーク版は活発に開発が続けられており、多くの開発者に利用されています。オリジナルのプロジェクトは停止状態ですが、フォーク版がその後継として機能し、バーコード認識ライブラリとしてのZBarの進化を牽引しています。

バーコードやQRコードに関連する技術としては、ZBarが読み取りを行うのに対し、コードを生成するためのライブラリとして「libqrencode」などがあります。ZBarに関する詳細な情報や、最新のソースコード、開発状況については、プロジェクトの公式ウェブサイトや、フォーク版プロジェクトのソースコードがミラーされているGitHubリポジトリなどを参照することができます。これらのリソースは、ZBarの利用や開発に興味がある人々にとって貴重な情報源となっています。

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