CASA

CASA：セゾングループから消えたファミリーレストランの物語

「CASA（カーサ）」は、かつてセゾングループの中核企業であった西洋フードシステムズ（旧：レストラン西武）が展開していたファミリーレストランです。スペイン語・イタリア語で「家」を意味する店名のとおり、地域に密着した営業を展開し、一時は全国200店舗以上を誇る人気店でした。西友や西武百貨店など、セゾングループ関連の商業施設を中心に店舗を構え、多くの顧客に親しまれていました。

CASAの隆盛と転換期

CASAは、1983年、西洋フードシステムズの和田繁明氏によって設立されました。1980～90年代にかけては、すかいらーく、デニーズ、ロイヤルホストと並ぶファミリーレストランとして、多店舗展開を積極的に推進。北海道から九州まで、幅広い地域に店舗を展開し、多くの顧客を獲得しました。

地域密着型の営業戦略も特徴的でした。店舗入り口付近にはモミの木を飾り、夜間はイルミネーションで彩り、近隣の主婦を対象とした料理教室なども開催。温かい雰囲気づくりと地域貢献を両立することで、高い顧客ロイヤルティを獲得することに成功しました。

しかし、バブル崩壊後の消費低迷はCASAにも大きな影響を与えました。競合他社が低価格帯の新業態を展開する中、CASAは寿屋系列のレストラン「グルッペ」を買収し、「町の洋食屋さん」をコンセプトとしたメニュー刷新を試みました。ハンディターミナルの導入が遅れたことも、経営の効率化を阻む要因となりました。

衰退と買収、そして分社化

業績不振を脱却できず、不採算店舗の閉鎖を余儀なくされたCASAは、1991年にはびっくりドンキーへのフランチャイズ加盟も検討するなど、様々な打開策を模索しました。2001年には「キッチンデミグラ」や「フーチン」といった新業態への転換計画を発表しましたが、実現には至りませんでした。

2002年、西洋フードシステムズはイギリスのコンパスグループに買収されました。コンパスグループは、コントラクト事業とコンセッション事業への経営資源集中を決定。慢性的な不振が続いていたCASAの郊外型店舗120店をココスジャパンに売却しました。九州エリアの店舗は「居食処 博多五風」に業態転換されました。

2007年には、残存するCASA店舗の大半と、他の業態の店舗約120店を新会社「西洋レストランシステムズ」に分割し、モルガン・スタンレー証券とオフィス井上、そして最終的には居酒屋チェーンのアンドモワに売却されました。

CASA Grandeと終焉

西洋フード・コンパスグループは、残ったCASA店舗を「CASA Grande（カーサ グランデ）」に改称して営業を続けました。しかし、2019年には商業施設内テナント店舗からの全面撤退が決定され、CASA Grandeは全店閉店となりました。

一方、アンドモワ傘下のCASA店舗も、2021年10月、アンドモワの事業停止に伴い全店閉店となりました。アンドモワは2022年4月6日に破産手続開始決定を受け、CASAの歴史は完全に幕を閉じました。

最終的に、西友の店舗内に残っていた数店舗のみが営業を継続していましたが、それも全て閉店しました。

関係各社と関連業態

CASAの歴史を語る上で、西洋フードシステムズ、西洋レストランシステムズ、コンパスグループ、アンドモワといった企業の存在は無視できません。これらの企業間の関係性、そしてCASA Grande、キッチンデミグラ、フーチン、博多五風、肉だら家といった関連業態についても理解することで、CASAの盛衰をより深く理解することができます。

ココスへの売却された120店舗のうち、105店舗がココスに業態転換しており、その中には、宮城県から兵庫県までの幅広い地域に店舗が存在していました。

また、西洋レストランシステムズが運営していた「藩」「京らーめん 糸ぐるま」「中国麺家」「小吃坊」「ams西武仙台店」「炭家米蔵」「パスタベラ」「食通天」「信濃」「スナックイン」など多様な業態も、CASAの関連事業として存在していました。これらの業態も、CASAと共に消滅していきました。

CASAの物語は、日本の外食産業における激動の時代を象徴するものです。かつての繁栄と、時代の流れの中で消えていったその姿は、多くの消費者に忘れられない記憶として残っていることでしょう。

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