PiO

パソコン雑誌『PiO』

『PiO』（ピオ）は、株式会社工学社が発行していたパソコン雑誌です。同社の主力雑誌『I/O』の別冊として1983年10月に誕生しました。誌名は、姉妹誌である『I/O』との関連から、コンピューター用語である「Parallel I/O」の略称から取られたとされています。

創刊当初は不定期の刊行でしたが、最初の3号を経て、1984年4月号からは月刊化されました。月刊化後の発売日は毎月8日でした。順調に発行を続けますが、1986年1月号（通巻22号）で誌面の一部リニューアルを行います。しかし、そのわずか1年足らず後の1986年10月号（通巻31号）をもって休刊となりました。

ゲームとポケコンに特化した内容

『PiO』は、ハードウェアやツール系プログラムの掲載が多く、比較的技術志向の強い『I/O』とは一線を画し、「マイコン・ゲームの情報誌」というキャッチフレーズのもと、ゲームプログラムに特化した内容が大きな特徴でした。特に、読者から投稿されたゲームプログラムを多数掲載し、アマチュアプログラマーの発表の場として機能しました。また、当時のホビーパソコンだけでなく、ポケットコンピューター（ポケコン）に関する記事も充実しており、ポケコンブームにおいて中心的な役割を果たした雑誌の一つと言えます。

当時の日本のパソコン雑誌の中で、読者投稿によるプログラムを掲載するスタイルは一般的でしたが、『PiO』は電波新聞社の『マイコンBASICマガジン』や徳間書店の『プログラムポシェット』と並び、「日本の誇る3大ペーパーソフトマガジン」と称されることもありました。ただし、『マイコンBASICマガジン』や『プログラムポシェット』が主にBASIC言語のプログラムリストを掲載していたのに対し、『PiO』は機械語で記述されたプログラムを扱うことが多く、さらにプログラムリスト自体の平均的な長さも相応にあったため、掲載プログラムを自分で入力して実行する際の難易度は、他の2誌に比べて高かったと言われています。

画期的な付録：プログラム収録ソノシート

『PiO』の最大かつ最も特徴的な点は、毎号付録としてプログラムが収録されたソノシートが付属していたことです。当時のホビーパソコンの外部記憶装置としては、カセットテープに音響信号としてプログラムを記録する方式が主流でした。PiOではこの方式を利用し、掲載されているいくつかのプログラムの音声をソノシートに収録しました。読者はこのソノシートをカセットテープに録音し、それをパソコンで読み込むことで、長大なプログラムリストをわざわざ手入力することなく、簡単にゲームやツールを楽しむことができました。

しかし、このソノシート方式も万能ではありませんでした。再生時のノイズやソノシート自体の歪みなどが原因で、パソコンが音声をうまく認識できず、スムーズにプログラムをロードできないケースも少なくありませんでした。誌面には、ソノシートからのロードに成功した話、失敗した話、そして様々なロード成功のための工夫やノイズ対策などが、読者からの投稿として多数寄せられていました。なお、ソノシート付録とは別に、『I/O』と同様に、一部の掲載プログラムはカセットテープやフロッピーディスクの形で別途パッケージ販売もされていました。

読者参加型のコミュニティ誌面

『PiO』はプログラムリストだけでなく、読者投稿によるイラストや、記事の欄外に掲載される短いコメント欄なども非常に充実していました。これにより、常連の投稿者を中心に読者間の活発な誌上コミュニティが形成されており、そのアットホームで投稿者主体の雰囲気が、当時のサブカルチャー雑誌『ファンロード』に例えられることも少なくありませんでした。これは、当時『I/O』などの古参雑誌を購読者数で追い抜いていたとされる『マイコンBASICマガジン』のような、読者参加型企画が豊富な雑誌を意識したものと推測されます。

休刊とその背景

しかし、時代の流れとともにパソコン市場が変化し、ユーザーが自作プログラムを楽しむスタイルから、パッケージ化された市販ソフトウェアを利用するスタイルへと移行していきました。これに対応するため、『PiO』も市販ゲームソフトの紹介などを一部取り入れるリニューアルを試みました。ですが、この変更は必ずしも従来の読者の要望や期待に沿うものではありませんでした。結果として、リニューアルから1年足らずの1986年10月号をもって、『PiO』は再び姉妹誌である『I/O』に吸収される形でその歴史に幕を閉じました。

休刊からしばらく経った1987年には、『I/O』の別冊という形で『PiO SPECIAL（ピオ・スペシャル）』が3冊発行されました。これらは休刊した『PiO』の精神を引き継ぎ、No.1にはパソコン用、No.2とNo.3にはポケコン用のプログラムがそれぞれ掲載されていました。

もう一度検索