SuperH

SuperH（スーパーエイチ）

SuperH（スーパーエイチ）は、日立製作所（後のルネサスエレクトロニクス）によって開発された、組み込み機器向けの32ビットRISCマイクロコンピュータアーキテクチャです。1990年代後半からのユビキタスコンピューティング社会を見据え、消費電力とパフォーマンス（MIPS/W）の最適化が目指されました。

概要

このアーキテクチャは、SH-1、SH-2、SH-3、SH-4の4種類のバージョンが1990年代に登場し、家電、AV機器、産業機器、ゲーム機、PDAなど多様な分野に幅広く採用されました。しかし、2000年代に入るとARMアーキテクチャに競争力を失い、市場シェアを減少させていきました。

特にSH-5アーキテクチャの開発は2000年までに完了していましたが、商業的成功には至らず、結局製品化されることはありませんでした。その後、SuperHアーキテクチャは組み込み向けマイクロコントローラ（MCU）として主に利用され、SH-MobileやSH-Naviといった製品群が成功を収めました。

ルネサスの再建過程において、SH系製品の多くは製造が打ち切られ、特に2012年以降はRH850といった新しいマイコンに置き換わっていきました。

歴史と開発の背景

日立製作所は1976年から米国モトローラと提携し、マイコン製造を開始しましたが、1980年代に入ると関係が悪化しました。日立は独自のH8およびH16アーキテクチャの開発に着手し、不遇な時期を迎えますが、モトローラとの訴訟が解決する1990年に、新たなアーキテクチャ「SH」の開発を開始しました。

SHシリーズは、1992年に最初の製品SH-1が発表され、その後SH-2、SH-3、SH-4が登場していきます。それぞれのプロセッサは、当初からさまざまな用途に対応すべく設計され、特にゲーム機においてはその普及が顕著でした。例えば、SH-2はセガサターンに、SH-4はドリームキャストに搭載されるなど、一世を風靡しました。

しかし、2000年代に入りARMアーキテクチャの普及に伴い、SHシリーズは厳しい競争に直面することになります。

特徴と技術

SuperHアーキテクチャは64ビットへの拡張も計画されましたが、顧客獲得に苦しみ、結果的にその実用化は実現しませんでした。例えば、SH-5は高性能なマルチメディアプロセッサとしての設計がなされていましたが市場での需要に応えられず、製品化はかなり厳しかったと言われています。

SHシリーズの特徴として、アドレス長とデータ長が32ビットである一方、インストラクションセットが16ビット固定長命令を使用しているため、コード効率を向上させています。この設計は後のアーキテクチャにも影響を与えることとなりました。

各SHシリーズは数字が若いものほど互換性があり、特にSH-1とSH-2は基盤の互換性が高いのが特長です。

結果と影響

携帯機器やカーナビゲーションなどの分野でSHシリーズは成功を収めたとはいえ、時代の進展とともにARMに市場を奪われる悲しい運命をたどります。2011年にはスマートフォンが主流となり、SH-Mobileの需要は激減。結果的にSH-Naviも他の製品との統合を余儀なくされ、SHアーキテクチャは2025年以降には製造中止になる可能性がある状況です。

現在もルネサスは「長期製品供給プログラム」を通じて顧客が求める限りSHマイコンの生産を続ける意向を示していますが、今後の展開には不透明感が漂っています。

以上がSuperHアーキテクチャの概要とその技術的背景についての詳細です。その豊富な歴史と技術革新は、今後のマイクロコンピュータ市場にも影響を与えていくことでしょう。

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