あさくま

ステーキのあさくま

株式会社あさくまは、かつて料理旅館として営業していた場所を起源に持つ日本の外食産業企業です。特にステーキレストランチェーンの展開で広く知られています。

始まりと「あさくま」の名の由来

その歴史は、創業者の近藤熊五郎氏が熱田で仕入れた魚を早朝から行商していたことに遡ります。「あさくま」という社名や店名は、この創業者の名前に由来しています。

1948年（昭和23年）9月には、愛知県愛知郡日進村に「合資会社割烹旅館朝熊西店」として法人化されました。現在のステーキレストラン事業の直接的な始まりは、1962年（昭和37年）3月、創業者の息子である近藤誠司氏が、この割烹旅館の一角で開設した「ドライバーズコーナーキッチンあさくま」です。約200平方メートルの店舗面積でスタートしたこの店は、後に日本における郊外ロードサイド型レストランの先駆けとなりました。

日本初のセントラルキッチン

事業が拡大し、1966年（昭和41年）には名古屋市内に「栄店」を開店しましたが、お客様から「社長のいるときといないときで味が違う」という声が上がったことが、画期的なシステムの導入につながります。

味の均一化を図るため、両店舗への肉の処理やソースなどの調理を集中して行い配送する「セントラルキッチン」の形式を導入。1968年（昭和43年）12月には、名古屋市港区に食材の一次加工を目的とした「セントラル・キッチン・センター」を開設しました。これは日本で初めてのセントラルキッチンとされています。この施設により、半加工品の供給が増え、肉の両面焼きが可能なグリルの独自開発や、約1ヶ月で調理技術が習得できるマニュアル整備なども進められ、多店舗展開の基盤が確立されました。

拡大と多角化

1970年代に入ると、あさくまはステーキを安価で提供するチェーン展開を目指し、コック中心の運営からパートタイマー中心へと転換を図ります。

1971年（昭和46年）には名古屋駅地下街にファーストフード業態の1号店を開店。
1972年（昭和47年）には岐阜県に愛知県外初の店舗を出店。
1973年（昭和48年）にはフランチャイズ展開を開始し、休眠会社を商号変更した「株式会社あさくま」として「ステーキのあさくま」の営業を本格化させました。同年にはアメリカへの海外進出も果たしています。
1974年（昭和49年）に関西、1979年（昭和54年）には関東へ進出し、1970年代末にはすかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズ・ジャパンと並び、日本の四大外食チェーンの一つに数えられる存在となりました。
* 1980年代には、レトルトコーンスープやドレッシングなどの外販事業も本格化し、株式会社アスクを設立。ダイエーとの業務提携を通じて販路を拡大しました。

この時期、あさくまは多様な業態開発にも積極的に取り組みました。高級ステーキレストラン「フレンチポテト」、フランス料理店「マーブルソース」、ロードサイド型中華料理店「けせらんぱさらん」、和食店「麦とろ 和話」、ステーキ丼のファーストフード店「ピクニックハウス」、低価格ステーキ店「あさくまジュニア」、バイキング形式の「ゴーゴーカフェ」など、様々なコンセプトの店舗を展開しました。

1991年（平成3年）には売上高約204億円を記録するなど、隆盛を極めましたが、1999年（平成11年）には不採算店の整理などのリストラを実施しました。

経営の変化と新たな展開

1995年（平成7年）には、創業家以外から初めての社長が就任するなど、経営体制に変化が見られました。

2006年（平成18年）12月、株式会社テンポスバスターズとの資本・業務提携を経て、2011年（平成23年）4月1日には同社の子会社となりました。これ以降、子会社の株式会社あさくまサクセッションを通じて、もつ焼き居酒屋、惣菜ビュッフェ、カフェ、インドネシア料理店など、多岐にわたる事業のM&Aや新規開業を行っています。

そして2019年（令和元年）6月27日には、東京証券取引所JASDAQスタンダード市場への株式上場を果たしました。近年は、「やっぱりあさくま」といった新業態の展開も行っています。

かつてはテレビドラマ『西部警察 PART-II』のロケ地となり、創業者の近藤誠司氏自身も出演したことや、プロ野球選手のイチロー氏が同社のコーンスープを愛飲していると語ったことなど、話題に上ることもあります。

料理旅館からスタートし、セントラルキッチンによる効率化と多店舗展開で成長を遂げ、時代の変化に応じて様々な業態開発や事業再編を重ねながら、あさくまはその歴史を紡いでいます。

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