お抱え運転手

お抱え運転手：顧客専属の運転のプロフェッショナル

お抱え運転手とは、特定の顧客に専属で乗用車を運転する職業ドライバーのことです。役員運転手、専属運転手など、様々な呼び名で呼ばれています。企業役員や著名人、政治家など、地位の高い人物が利用するケースが多く見られます。

欧米におけるお抱え運転手

英語圏では、高級車を運転するプロの運転手を「ショーファー (chauffeur)」と呼びます。この言葉はフランス語の「火夫」に由来し、蒸気自動車の時代には運転と燃料の供給を兼任していたことにちなみます。お抱え運転手は英語で「personal chauffeur (driver)」などと呼ばれ、個人雇用が一般的でしたが、近年では運転手派遣サービスを提供する会社も増加しています。ショーファーが運転する高級車（リムジンなど）は「ショーファードリブン」と呼ばれます。

日本におけるお抱え運転手の歴史と現状

日本においては、1911年当時、自動車の普及に比べて運転手不足だったため、富裕層に仕えるお抱え運転手は非常に貴重で、需要が非常に高かったとされています。昭和初期の不況時にも、官庁や大企業ではお抱え運転手の需要が大きく、運転免許があれば仕事に困ることはなかったと伝えられています。

かつては官公庁や地方公共団体が運転手を直接雇用することが多かったですが、近年は外部委託が主流となっています。中には委託をやめ、技術職員や一般職員が運転を担当するケースも見られます。

お抱え運転手の仕事は、顧客の運転だけでなく、「待つ」という側面も非常に重要です。顧客の要望や好みを理解し、対応することが求められ、車内では重要な会話が交わされることもあるため、守秘義務は必須です。顧客との親密な関係が構築されることもありますが、それがトラブルに発展するリスクも存在します。歴史的には、身分違いの恋愛関係から事件に発展したり、金銭トラブルなどが発生した例もあります。

お抱え運転手の役割と必要な資質

お抱え運転手の仕事は、安全運転はもちろんのこと、顧客への細やかな気配り、高いコミュニケーション能力、そして何よりも強い責任感と誠実さが求められます。顧客のスケジュール管理、旅程の計画、緊急時の対応など、運転以外の業務も担うことがあり、多様なスキルが求められます。また、顧客のプライバシーを厳守し、機密情報を漏らさないよう、高い倫理観を持つことが不可欠です。

現代のお抱え運転手の状況

現代においても、企業経営者や著名人など、高収入層を中心に需要は存在しています。しかし、かつてのような専属運転手の雇用形態は減少し、運転手派遣会社を利用するケースが増加傾向にあります。これは、人件費や福利厚生のコスト削減、柔軟な人員配置などのメリットがあるためです。

おわりに

お抱え運転手は、単なる運転手という枠を超え、顧客の信頼を得て、密接な関係を築く職業です。高度な運転技術、そして高い人間性とプロ意識が求められる、専門性の高い職種と言えるでしょう。歴史的背景と現代の状況を理解することで、お抱え運転手の役割と重要性をより深く知ることができます。

もう一度検索