お葬式

映画『お葬式』の魅力と背景

1984年に公開された日本映画『お葬式』は、伊丹十三の監督デビュー作です。この作品は、葬儀という厳粛なテーマを扱いながらも、家族の混乱や周囲の人々とのコミカルなやり取りを描くことで、観客に笑いをもたらしました。タイトルがもたらすシリアスなイメージにもかかわらず、作品には多くのユーモアが散りばめられており、期待を裏切るかのようにヒットしました。

制作の背景

伊丹は、妻である宮本信子の父が亡くなった際の実体験をもとに、本作の脚本をわずか1週間で仕上げました。映画の撮影は神奈川県湯河原町にある伊丹の別荘で行われ、製作費は約1億円。興行面でも予想以上の成功を収め、ATGの親会社である東宝を通じて全国公開されることになりました。

本作のユニークな点の一つは、登場人物たちのリアルな描写です。登場人物同士のやり取りや、葬儀という特異な状況における人々の行動が、リアリティとともに笑いを生み出します。特に、主人公の侘助は葬儀について全く無知で、呆然としながらも周囲の要求に応える姿が印象的です。

ストーリーの展開

物語は、俳優の井上侘助とその妻で女優の雨宮千鶴子が、千鶴子の父の死を受けて葬儀を執り行うことから始まります。数々のトラブルに見舞われながらも、親戚や友人たちとの連携を図る侘助。しかし、彼は愛人の良子との関係も絡み、さまざまな困難に直面します。これは、現代における家族のあり方や、葬式における人間模様を多角的に捉えたストーリーです。

主な登場人物

• - 井上侘助（演：山﨑努）: 主人公であり、葬式に対する知識が全くない。愛人との関係や、周囲からのプレッシャーに苦しむ。
• - 雨宮千鶴子（演：宮本信子）: 侘助の妻で、明るい性格を持つ。家族をまとめる中心的存在。
• - 雨宮きく江（演：菅井きん）: 千鶴子の母で、葬儀の喪主を務める。しっかり者であり、葬式を取り仕切ることに徹し、家族を鼓舞する。

また、侘助のマネージャーや葬儀業者、さらには様々な親類や友人たちが複雑な人間関係を築いており、物語に厚みを加えています。

映画の評価と受賞歴

この映画は、公開から数十年を経てもなお多くの映画ファンに愛されています。特に、伊丹のユーモアのセンスや、家族の絆と人間模様を描いた点が高く評価されました。第8回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞し、さらには第58回キネマ旬報ベスト・テンでは、作品賞と主演男優賞を獲得しました。

まとめ

葬式は日本の伝統的な文化を背景に持ちながらも、家族や友人、愛人との関係が絡むことで、葬儀というシチュエーションにおける人間のコミカルな側面を浮き彫りにしています。このような点が『お葬式』の魅力であり、観客にとって感動と笑いをもたらす作品に仕上がっています。

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