こなたよりかなたまで

こなたよりかなたまで：余命と吸血鬼、そして青春の物語

2003年12月12日、F&Cから発売された18禁ノベルゲーム『こなたよりかなたまで』(通称：こなかな)は、多くのプレイヤーの心に深く刻まれた作品です。元々は、シナリオライター健速氏が2001年にWeb上で公開していたフリーゲーム『こなたからかなたまで』をベースとしており、主人公の状況や一部キャラクターの設定に違いはあれど、物語の中心となるシナリオは踏襲されています。

物語のあらすじ

主人公・遥彼方は、高校三年生。両親を亡くし、自身も末期の癌に侵され、余命宣告を受けています。彼方の支えは、幼馴染の耕介と佳苗。抗癌剤の副作用に苦しむ彼方を、耕介は献身的に支えます。しかし、彼方は佳苗に病気を打ち明けられずにいました。そんなある日、彼方の前に永遠の命を持つ吸血鬼の少女、クリスが現れます。クリスは逃亡中、彼方の家に転がり込み、彼方の人生に大きな変化をもたらします。

主要キャラクター

遥 彼方: 本作の主人公。余命宣告を受けながらも、達観した様子で日々を過ごします。佳苗への想いを抱えながらも、自身の病気を隠すことで葛藤を抱えています。クリスとの出会いをきっかけに、「自分自身の生き方」について深く考えさせられます。
クリステル・V・マリー（クリス）: 永遠の命を持つ吸血鬼。尊大で独特の口調が特徴です。昼間は人間と変わらない体力ですが、夜間は圧倒的な能力を発揮します。「吸血鬼の最後の生き残り」と称し、様々な存在から追われています。彼方たちの学校に転校生として潜り込み、彼方の生活に深く関わっていきます。
佐倉 佳苗: 彼方と耕介の幼馴染。彼方に想いを寄せており、彼方の病気を知らないまま、告白します。クリスを恋人と勘違いするなど、物語に大きな影響を与えます。
九重 二十重: クリスを追う存在。彼方たちのクラスに転校生として現れます。クリスを「餌」と認識しており、冷酷な一面を見せています。
鹿島 いずみ: 彼方が通院する病院の看護師。年齢不詳で、独特の雰囲気を持つ人物です。一見軽妙な言動の裏に、繊細な心を隠しています。
朝倉 優: 彼方と同じ病院に入院している少女。長い入院生活を送っており、少し幼い面が見られます。彼方を「お兄ちゃん」と呼び慕います。
* 島田 耕介: 彼方の親友。空手の有段者で、彼方の病気を唯一知っています。彼方を支え、佳苗の気持ちも理解しながら、静かに見守ります。

ゲームシステムと展開

『こなたよりかなたまで』は、ノベルゲームとして、選択肢を選びながら物語を進めていきます。2周目以降はクリスエンドへの分岐選択肢が登場するなど、やり込み要素も備えています。 様々なキャラクターとの複雑な人間関係、切ない恋愛模様、そして主人公の死生観が丁寧に描かれており、プレイヤーは彼方と共に、人生の様々な局面を経験することになります。

関連作品

『こなたよりかなたまで』は、小説版がパラダイムノベルスより出版され、au向け携帯アプリとしてもリリースされています。また、続編としてPlayStation Portable版『屋根裏の彼女』、アダルトゲーム版『こなかな2 Konatayori Kanatamade II』も制作されています。これらの作品も、それぞれ異なる魅力を持っており、『こなたよりかなたまで』の世界観をさらに深く楽しむことができます。

音楽とスタッフ

ゲームの音楽はI'veが担当し、KOTOKOやMOMOといった実力派アーティストが主題歌を歌い上げている点も、作品の魅力を高めています。原画はしゃあ氏、シナリオは健速氏と、実力派スタッフによって制作された、完成度の高い作品と言えるでしょう。

『こなたよりかなたまで』は、青春、恋愛、そして死生観といった普遍的なテーマを、独特の世界観と魅力的なキャラクターで描いた、名作ノベルゲームです。一度プレイすれば、その余韻に浸ること間違いありません。

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