それでも歩は寄せてくる

『それでも歩は寄せてくる』

『それでも歩は寄せてくる』は、日本の漫画家・山本崇一朗が描く作品で、漫画としての連載は2019年に始まり、2023年まで続きました。この作品は主に、将棋部を舞台にした高校生たちの恋愛模様を描いており、時折ユーモアが散りばめられたラブコメディとして多くの読者に親しまれています。キャッチコピーは「この恋、詰むや詰まざるや……？」であり、恋愛と将棋の駆け引きが絶妙に絡み合うストーリー展開が魅力です。

物語は高校生の田中歩と八乙女うるしの二人を中心に展開されます。田中歩は将棋初心者ながら、将棋部に入部。高校1年生の彼は同じ部の先輩・八乙女うるしに恋心を抱いており、彼女を照れさせるためにアタックするものの、毎回の将棋勝負で負け続けています。彼の想いは強いものの、告白は将棋での勝利を条件にしており、そのポーカーフェイスが彼の悩みの種でもあります。

一方、八乙女うるしは部の部長を自称する高校2年生。彼女は優秀な成績を持ちながら、運動にはあまり自信がないという一面も持っています。彼女もまた、田中歩に恋心を抱いており、彼の甘い言葉に赤面しつつも、彼を照れさせようと奮闘しています。この二人の相互に抱く感情がなかなか前に進まない様子が、読者を、じれったくも魅了するポイントです。

田中の幼なじみである角竜タケルや、同級生の御影桜子といったキャラクターも登場し、それぞれの恋愛模様も描かれることで物語に深みを与えています。タケルは将棋部の幽霊部員ながら、剣道での名声を持つキャラクターで、彼自身の恋愛にも焦点が当てられます。桜子は、その独特な性格と能力で物語の鍵をにぎります。

また、本作はテレビアニメ化もされ、2022年には放送されました。作品は多くのファンを魅了し、特に『次にくるマンガ大賞2020』ではコミックス部門で第3位を獲得し、2022年までには累計発行部数が150万部を超えています。このような人気を背景に、将棋を通じた関係性や恋愛の細やかな描写は、多くのジャンルを超えて愛されています。

さらに、登場人物たちが織り成す将棋の駆け引きは、恋愛のメタファーとしても映え、読者に新たな視点を提供しつつ、将棋の魅力を伝えている点も評価されています。これらの要素が相まって、『それでも歩は寄せてくる』は、ただの恋愛漫画にとどまらず、友情や成長、そして将棋の世界の奥深さをも表現した作品となっています。

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