マクラ

マクラ：イタリア山間の小さな村の魅力

マクラ（Macra）は、イタリア共和国ピエモンテ州クーネオ県に位置する、人口約50人の基礎自治体（コムーネ）です。ヴァッレ・マイラ（別名ヴァッレ・マクラ）の中央部に位置し、その名は村を流れる川（マイラ川）と谷筋に由来します。

名称の由来と歴史

Macraという名前は、この地域を流れるマイラ川、そしてその川が形作る谷筋、ヴァッレ・マイラに由来します。自治体名として用いられるようになったのは1928年のことです。この地域はオック語が話されるオクシタニア地方の一部であり、Comuna de L'Armaというオック語名も持っています。

アルマの集落は、12世紀の記録にAlmaとして登場します。アルマという名前は、ケルト・リグリア語で洞窟・岩屋を意味するbalmaに由来すると考えられています。

地理と景観

マクラはクーネオ県の西部に位置し、県都クーネオから西北西へ約32km、州都トリノから南西へ約75kmの場所にあります。周囲をサンペイレ、サン・ダミアーノ・マクラ、チェッレ・ディ・マクラ、マルモラ、ストロッポといったコムーネに囲まれています。

村域の北と南は山岳地帯であり、北部には標高2400mを超えるMonte Rastciasが聳えています。マイラ川が村内を西から東へと流れ、南からはリオ川が合流します。村は大きく分けて、北部のアルマ地区と南部のアルバレット地区に分かれています。

アンチョビと行商人

マクラは、南隣のチェッレ・ディ・マクラとともに、アンチョビ（イタリア語では「アッチューガ」acciuga）の塩漬けで知られています。古くから行商人として生活を立ててきたこの地域の人々は、アンチョビをイタリア北部の都市に広める役割を担いました。

伝説によれば、かつらを作るための毛髪をジェノヴァに売りに行った行商人が、アンチョビを仕入れて帰り道で売りさばき、大儲けをしたのがきっかけとされています。塩漬けのアンチョビは、塩に課される高い関税を免れる抜け道としての側面も持ち、富裕層だけでなく、塩が不足する山間部の貧しい人々にも重宝されました。

20世紀以降、人口は都市部に流出し過疎化が進みましたが、マクラ出身者は各地で行商・移動店舗から卸売業へと進出し、スーパーマーケットの普及とともにアンチョビを広める役割を果たしました。

文化と観光

マクラは豊かな自然に恵まれており、ハイキングや本格的な登山を楽しむことができます。また、古い教会や礼拝堂、水車小屋や鍛冶場など、伝統的な生活の痕跡も観光資源となっています。村の守護聖人である聖マルチェッリーノの記念日、4月26日には祭りが行われ、アンチョビの展示会や音楽イベントなどが催されます。

交通

マイラ川に沿って走る県道SP422が村域を東西に貫いています。マクラ集落からは県道SP116が分岐し、チェッレ・ディ・マクラへと続いています。

まとめ

マクラは、イタリアの山奥にひっそりと佇む、人口わずか50人の小さな村です。しかし、その豊かな自然、古い歴史、そしてアンチョビに代表される独特の文化は、訪れる人々を魅了します。ハイキングや登山を楽しむもよし、古い教会や水車小屋を巡るもよし、アンチョビを味わいながら地元の料理に舌鼓を打つもよし。マクラは、都会の喧騒を忘れ、心静かに過ごしたい人にとって、忘れられない思い出となるでしょう。

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