もつ鍋

もつ鍋：多様な魅力と地域ごとの特色

もつ鍋は、牛または豚のもつ（ホルモン）を主材料とする日本の鍋料理です。特に福岡県福岡市を中心に食されてきたものが広く知られています。

福岡・博多の「もつ鍋」

博多もつ鍋のルーツは、第二次世界大戦後に誕生しました。当初は、もつ肉とニラをアルミ鍋で醤油味に炊いたシンプルなものでしたが、1960年代にはごま油で唐辛子を炒め、もつとネギ類を加えてすき焼き風に食べるスタイルが登場しました。この頃は「ホルモン鍋」とも呼ばれていました。

近年の主流は、鰹や昆布、鶏ガラなどでとった出汁をベースに、醤油や味噌で味付けしたスープです。下処理されたもつと大量のニラ、キャベツ、そして臭み消しのにんにくを加えて煮込みます。好みで唐辛子（鷹の爪）を加えることもあります。具材を食べ終えた後の締めには、うどんが定番でしたが、1990年頃からは長崎出身者の影響でちゃんぽん麺を入れるスタイルも人気です。もつの種類にこだわる店や、水炊き風に酢醤油で食べることを推奨する店もあります。

また、一般的な土鍋ではなく、両側に取っ手の付いた浅いステンレス鍋が使われることが多いのも特徴です。

1992年に東京に博多風もつ鍋店がオープンすると、その手軽さと美味しさからブームとなり、同年の新語・[[流行語大賞]]を受賞しました。しかし、BSE問題や一過性の流行ということもあり、以前からもつ煮が存在していた東京などの一般家庭では、絶対的な定着には至りませんでした。

福岡では、もつ鍋は郷土料理として根強い人気を誇り、多くの老舗が存在します。一般的な居酒屋でも、博多ラーメンに次ぐ人気メニューとなっています。タキイ種苗の調査では、「好きな鍋料理アンケート」で8位でしたが、通信販売サイトでは最も人気が高く、全国的な認知度も依然として高いことがうかがえます。

その他のもつ鍋（ホルモン鍋）

下関の「とんちゃん鍋」

山口県下関市には、博多のもつ鍋とは異なる「とんちゃん鍋」があります。平たいステンレス鍋に、甘辛い味噌ベースのタレに漬け込んだ牛ホルモンと、キャベツ、もやし、ネギを山のように盛りつけ、野菜の水分だけで蒸し煮にするのが特徴です。「とんちゃん」は元々朝鮮語で「豚の小腸」を意味しますが、現在では牛の腸が主に使われています。

田川の「田川ホルモン鍋」

福岡県田川地方では、炭鉱夫がセメント袋を鍋の代わりにしてホルモンを焼いて食べたのが始まりとされる「田川ホルモン鍋」があります。中央部がくぼんだ鉄板に、ニンニクだれで下味を付けたホルモンとキャベツなどの野菜を入れ、煮込んだものです。田川市・田川郡の複数の朝鮮料理店で提供されています。

もつ鍋は、地域によって様々なスタイルがあり、それぞれ独自の歴史と文化を持っています。ぜひ、各地のもつ鍋を味わってみてください。

関連項目

日本料理
ちりとり鍋（大阪発祥の鍋料理。タレに漬けたもつ等を具材に用いるなど、下関・田川のホルモン鍋に類似）
* なんこ鍋（馬肉の内臓の鍋）

もう一度検索