アグリツーリズム

アグリツーリズム（グリーンツーリズム）とは

アグリツーリズム、またはアグロツーリズムは、都市部の住民が農場や農村地域で余暇を過ごす活動を指します。日本では一般的にグリーンツーリズムと呼ばれ、農山漁村の自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動として位置づけられています。グリーンツーリズムは、単なる観光とは異なり、農村での生活体験や地域住民との触れ合いを重視する点が特徴です。

グリーンツーリズムの概要

グリーンツーリズムは、農山漁村の豊かな自然や文化に触れ、ゆったりとした時間を過ごすことを目的としています。日本の農山漁村余暇法では、「農村滞在型余暇活動」を都市住民が農村に滞在し、農作業を体験したり、農業への理解を深める活動と定義しています。この活動の根底には、都市と農山漁村の住民同士の交流があり、体験、産物、生活、文化など、農林水産業を中心とした生活の営みが交流の媒体となります。

アグリツーリズムのタイプ

アグリツーリズムの活動は多岐にわたり、以下のようなカテゴリーに分類できます。

消費者への直販: 農産物直売所や自分で収穫するスタイルの体験。
農業教育: 学校の農場見学や農業体験プログラム。
おもてなし: 農家民宿や民泊での宿泊体験。
レクリエーション: 狩猟や乗馬などのアウトドア活動。
娯楽: 干し草に乗ったり、収穫祭などのイベント参加。

多くの観光客は、果物狩りや動物との触れ合いを楽しみ、トウモロコシ迷路や農場での作業体験も人気があります。

アグリツーリズムの経済的利益

アグリツーリズムは、小規模農家にとって経営を安定させるための重要な手段となっています。繁忙期以外の時期に観光客を受け入れることで、新たな収入源を確保し、経営の多角化を図ることができます。また、地域経済への波及効果も大きく、観光客の増加は周辺地域にも経済的な潤いをもたらします。

アグリツーリズムの発祥

アグリツーリズムはヨーロッパが発祥の地であり、「アグリツーリズモ」（イタリア）や「ルーラルツーリズム」（イギリス）とも呼ばれます。ロマン主義の影響を受けた民俗学が、その背景にあります。民俗学では、自然と調和した農村の生活が再評価され、観光の対象となりました。

日本におけるグリーンツーリズム

ヨーロッパでは長期滞在型の休暇が一般的ですが、日本では都市と農村の距離が比較的近いことや、長期休暇が取りにくい労働環境から、日帰りや短期滞在が主流です。また、団体旅行の形態が好まれる傾向があり、日本人の生活様式に合わせたグリーンツーリズムが模索されてきました。2000年代以降、「日本型グリーンツーリズム」という表現も使われるようになり、都市と農山漁村の交流全般を指す言葉として定着しています。

グリーンツーリズムの従来型と新しい傾向

従来型: 農産物の直売所や地域の祭りなどのイベント。
* 新しい傾向: 農作業体験、学校教育での農業体験、自然との触れ合いなど。

政府による政策

1992年、農林水産省が「グリーンツーリズム」という言葉を提唱し、1996年までに全国205箇所をモデル地区に指定して振興を図りました。農林水産省は、グリーンツーリズムを「農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」と位置づけています。2006年には、「農山漁村余暇法」が施行され、グリーンツーリズムの推進が法的に裏付けられました。

導入の背景

近年、効率や大量生産に対する疑問の声が高まり、スローフードやスローライフといった概念が注目されています。また、自然との関わりが薄れてしまった現代社会において、グリーンツーリズムは自然との再会を求める人々のニーズに応えるものとして関心を集めています。農村地域にとっても、地域活性化の手段として期待されています。

ブルーツーリズム

漁村に滞在する余暇活動は、2000年代から「ブルーツーリズム」と呼ばれ、離島や漁村の振興、魚食の普及に貢献しています。近年では、交流人口の増加や、漁業体験を通じた地域との関わりを深める動きも広がっています。

まとめ

アグリツーリズム（グリーンツーリズム）は、都市と農村を結ぶ架け橋として、地域活性化や人々の心の豊かさを育む上で重要な役割を果たしています。今後も、自然や文化、人との触れ合いを求める人々にとって、ますます重要な存在となるでしょう。

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