アスコツト

アスコット：競走界とオリンピックを駆け抜けた名馬

アスコットは、日本を代表する競走馬であり、オリンピックの馬術競技に出場した希有な存在です。1930年代、その類まれな才能で人々を魅了し、競走馬としての華々しい経歴と、オリンピックでの活躍は、日本の競馬史、そして馬術競技史に輝く一頁を刻みました。

輝かしい競走馬時代

アスコットは宮内省下総御料牧場で生産されました。父はチャペルブランプトンプ、母はイギリスから輸入された牝馬プロポンチスの直仔である種秀という名門の血統を受け継いでいます。兄には当時の最強馬の一角として名を馳せていたワカクサがいました。

3歳になったアスコットは、セリ市で8000円の落札価格という低価格で尾形景造（尾形藤吉）に迎え入れられました。馬体はやせ細り、脚部にも不安を抱えていたため、高額での取引は期待されていませんでした。しかし、尾形はアスコットの温順で素直な性格と、優れた学習能力に驚かされます。

当初は才能に懐疑的だった尾形も、アスコットの潜在能力の高さと、意外なほど丈夫な脚元に気づき、兄ワカクサに匹敵する活躍を期待するようになりました。馬主である多賀の配慮もあり、アスコットの脚部は着実に強化されていきました。

1931年秋にデビューしたアスコットは、初戦から勝利を収めます。その後も数々のレースで好成績を収め、1933年春に引退するまでに、通算35戦17勝、2着13回という輝かしい成績を残しました。総獲得賞金6万8423円は当時の最高記録でした。

オリンピックへの挑戦

競走馬を引退したアスコットは、種牡馬になる道もあったものの、オリンピックの馬術競技馬に転用されることになります。東久邇宮稔彦王に寄贈され、陸軍騎兵学校で、ロサンゼルスオリンピックの金メダリストである西竹一による指導を受けることとなりました。

1936年ベルリンオリンピックでは、日本代表として総合馬術競技に出場。馬場[[馬術]]では競技委員長から高い評価を受けましたが、西との呼吸が合わず思うような成績を残せませんでした。しかし、野外耐久審査ではアクシデントを乗り越え5位に入賞。最終日の障害飛越でも健闘し、総合成績で12位という結果を残しました。アスコットの活躍は、日本の国産馬の能力の高さを世界に示すこととなりました。

西竹一はアスコットの能力を高く評価し、尾形も競走馬時代の勝利以上にアスコットのオリンピックでの活躍を喜びました。アスコットはその後も東京オリンピック出場を目指して訓練を続けましたが、第二次世界大戦の勃発によりオリンピックは中止。その後も馬術競技会に出場していましたが、戦後の混乱の中でその最期は明らかになっていません。

アスコットの競走成績

1931年秋季：6戦4勝
1932年春季：8戦3勝（大禮記念優勝）
1932年秋季：16戦6勝（目黒帝室御賞典、横浜帝室御賞典で2着）
1933年春季：6戦4勝（中山四千米、目黒帝室御賞典、目黒記念、横浜特別優勝）

アスコットの血統

アスコットの祖母であるプロポンチスは、小岩井農場が1907年にイギリスから輸入した20頭の繁殖牝馬の1頭です。その血統からは数々の名馬が誕生しています。

アスコットの物語は、競走馬としての成功だけでなく、オリンピック出場という偉業も達成した、類まれな才能を持つ馬の生涯を物語るものです。その功績は、日本の競馬史、そして馬術競技史に永遠に刻まれることでしょう。そして、その生涯の謎の一部は、現在もなお、解明されていない部分も残されています。

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