アプスについての詳細
アプス(apse)または後陣は、建物の壁面に半円形または多角形の窪みとして設置される特徴的な構造です。この構造は、主にローマ建築に由来し、宗教的な建物や世俗的な建物のいずれにも見られます。特に
教会建築においては、内陣の東端に位置する至聖所の一部として、
教会堂の外部に半ドームを張り出す形で設けられることが一般的です。
構造と用途
アプスは、
教会堂やカテドラルの設計において重要かつ象徴的な役割を果たしています。この部分は、特に初期キリスト教の聖堂では、階段状の構造を持つことがあり、プレスビテリウムや司教座を設けるために床面が持ち上げられることもありました。また、内陣をテンプロンやイコノスタシスによって区切り、内部は
モザイクや絵画で豪華に装飾されます。
ビザンティン建築では、アプスの両側にパストフォリアが設置されることが多く、
教会堂の東側に特徴的な3連の後陣が形成されることがあります。このデザインは正
教会の伝統的な平面図に基づくもので、多くの正
教会の聖堂がこのスタイルを採用しています。
歴史的な変遷
西ヨーロッパのシトー会
教会堂では、方形のアプスが特徴的でしたが、時代とともに変化が見られ、アプスと袖廊の間に仕切りが設けられるようになりました。こうした変化により、アプスの役割は次第に小さな礼拝室としての位置づけにとどまり、
12世紀には周歩廊に取り付けられた小礼拝室(後陣)の集合体が一般化しました。
しかし、ゴシック建築の時代が到来する頃には、アプスと内陣の区分はほぼ無視されるようになり、内陣部の奥行きが重視されるようになりました。このため、アプスの存在感は次第に薄れることになりました。
美術におけるアプス
アプスには、しばしば宗教的な象徴が描かれ、特に
パナギアの
イコンなどが多く見られることが特徴です。これは、アプスが宗教的な儀式や信仰の重要な場であることを反映しています。
このように、アプスは宗教建築の中で特有の役割を持ち、時代とともにそのデザインや機能に変化があったものの、依然として重要な構成要素であり続けています。一般的に、アプスは建物全体の美しさや宗教的な意味合いを強化する重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
参考文献
- - ニコラス・ペヴスナーほか 『世界建築辞典』
- - シリル・マンゴー 『図説世界建築史 ビザンティン建築』
- - ハンス・エリッヒ・クーバッハ 『図説世界建築史 ロマネスク建築』
- - ルイ・グロテッキ 『図説世界建築史 ゴシック建築』