アポロコンピュータ

アポロコンピュータ(Apollo Computer Inc.)

アポロコンピュータは、1980年にウィリアム・ポデュスカらによって設立された、1980年代のワークステーション市場を牽引した企業です。同社は、高性能グラフィカルワークステーションの開発・製造を手掛け、SymbolicsやSun Microsystemsと並び、この分野のパイオニアとして名を馳せました。

特徴

当時のコンピュータ企業と同様に、アポロはハードウェアとソフトウェアの多くを自社で製造していました。これは、IBM PC互換機メーカーとは対照的な特徴です。

歴史

アポロは、Sun Microsystemsに先駆けて1980年に創業しました。創業者には、ポデュスカの他に、デイブ・ネルソン、マイク・グリータ、チャーリー・スペクター、ボブ・アントヌッチオ、ジェリー・スタンリー、デイブ・ルブラノらが名を連ねています。設立時のエンジニアリングチームには、マイク・スポラー、バーニー・スタンプ、ラス・バーバー、ポール・リーチ、アンディ・マーキュビッツらが参加しました。

1981年には、Motorola 68000マイクロプロセッサを搭載したDN100ワークステーションを発表。1980年から1987年まで、ネットワークワークステーション市場で最大のシェアを誇りました。1986年後半には、四半期売上高が1億ドルを超え、年末にはエンジニアリングワークステーション市場で世界最大のシェアを獲得。これは、2位のSun Microsystemsの2倍のシェアでした。

しかし、1987年末には、市場シェアでDigital Equipment Corporation、Sunに次ぐ3位に後退します。それでも、Hewlett-PackardやIBMよりも上位に位置していました。アポロの主な顧客には、メンター・グラフィックス、ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラー、シカゴ・リサーチ・アンド・トレーディング、ボーイングなどが含まれていました。

1984年には、トーマス・ヴァンダーズライスが社長兼CEOに就任し、創業者のウィリアム・ポデュスカは1985年に会社を辞任しStellarを設立しました。

1980年代後半には、IBM PCおよびその互換機が市場に浸透し始め、ワークステーション業界全体が苦境に立たされました。アポロも、為替投機による損失や製品需要の減少により、多額の損失を被りました。

1989年、アポロはHewlett-Packardに4億7,600万ドルで買収され、1990年から1997年にかけて段階的に閉鎖されました。しかし、買収後もHPはアポロの技術を自社のHP 9000シリーズのワークステーションやサーバーに統合しました。アポロのエンジニアリングセンターは、PA-RISCワークステーションの開発を引き継ぎ、しばらくの間、HPワークステーションのブランド名（HP Apollo 9000）として存続しました。また、アポロは、ラショナル社のRational ClearCaseに影響を与えたリビジョン管理システムDSEE(Domain Software Engineering Environment)を開発しました。

アポロ製品に対するHPのサポートは、当初は限定的でしたが、1992年後半に再編成されました。当時、アポロ製品のユーザーは約10万人、ユーザーグループIWorks（旧InterWorks）には約4,500人のメンバーがいました。HPは、Sunなどの競合他社のハードウェアを下取りに出して自社ワークステーションを割引価格で購入できるプログラムを実施し、市場競争を激化させました。

日本では、日本アポロコンピュータ(株)の他、メンター・グラフィックス社のプラットフォームとしても知られており、ハードウェア込みで販売されていました。

製品

ハードウェア

DN100ワークステーションは、2つのMotorola 68000プロセッサを搭載していました。デュアルプロセッサ設計では、一方のプロセッサがウォッチドッグとして動作し、もう一方がOSとプログラム命令を実行することで、ページフォールトの自動切り替えを実現していました。ページフォールトが発生すると、メインCPUはメモリサイクルの途中で停止し、ウォッチドッグCPUがページをメモリに取り込み、メインCPUはページフォールトに気づかずに処理を続行できました。しかし、その後のMotorola 68010プロセッサの改良により、デュアルプロセッサ設計は不要になりました。

また、メモリページサイズ、ネットワークパケット、ディスクセクタサイズを全て1Kバイトとするなど、効率性を重視した設計が採用されました。この設計により、ネットワーク全体と個々のコンピュータでページフォールトが発生する可能性があり、Aegisファイルシステムはネットワーク全体にわたるメモリマップトファイルの単一システムを構成しました。ネットワークの名前空間は、新しいワークステーションの追加などで自動的に検出されました。

同社は、第2世代IBM-PCで使用されているISAバスを採用して独自のデータバスアーキテクチャから移行するとともに、RISC技術を採用してハイエンドプロセッサへと移行し、最終的にはPRISMラインを生産しました。

オペレーティングシステム

アポロのワークステーションは、独自のオペレーティングシステムであるAegisを実行していました。これは、当時シングルCPUのUnixライセンスが高価だったため、POSIXに準拠したUnix代替シェルを備えたものでした。Aegisは、Multicsタイムシェアリングオペレーティングシステムの概念に基づき、シェルプログラミング、単一レベル記憶、オブジェクト指向設計などの概念を採用していました。Aegisは、独自のPascalで記述されていました。コマンド体系もUnixとは異なり、単一ベンダー製であったため統一が図られていました。

Unixの普及に伴い、Aegisは後にUnixを取り込んだDomain/OSに置き換えられました。Domain/OSは、最初はAegisの上位レイヤーでしたが、後にUnixカーネル上に構築されました。リリース10ではUnixの大部分が組み込まれましたが、以前のリリースとの下位互換性の制約から、システムが肥大化し、速度が大幅に低下しました。最終的に、Hewlett PackardはDomain/OSラインを閉鎖しました。

ウィンドウシステム

ウィンドウシステムはOSと一体化しており、Display Managerと呼ばれていました。入力用ウインドウ（Input pad）と出力ウインドウ（Transcript pad）が分離されており、キー入力と処理結果の出力が混ざって画面が乱れることがありませんでした。付属のエディタの機能はInput pad上でも使用可能であり、複雑なコマンド操作が可能でした。

ネットワーク

アポロのワークステーションは、当初からトークンリング方式のネットワークを標準で搭載していました。これは、オフィス環境で数十台のコンピュータからなる小規模ネットワークをサポートするように設計されていました。ネットワーク上のどのハードドライブからでもダイレクトメモリアクセスのページフォールトを可能にし、デマンドページングをネットワーク上で可能にした最初のシステムの一つでした。これにより、ネットワークの透明性が高く、システム管理者とマシンの比率が低い運用が可能でした。

しかし、他の既存のネットワークハードウェアやソフトウェアとの相互運用はできませんでした。業界では、より遅いネットワークであったものの、イーサネットとTCP/IPが広く採用されました。アポロは後にこれらの業界標準をサポートするようになりましたが、イーサネットとトークンリングの両方を使用した独自のDomainネットワークもサポートし続けました。Domainネットワーキングは、Xerox Network Systemsをモデルにしています。

モデル一覧

DN100
DN300
DN460
DN550
DN660
DN3000
DN3500
DN4000
DN4500
DN10000

参照項目

Apollo/Domain|Apollo_Domain
Apollo PRISM
Display Manager
Domain/OS

参考文献

この項目は、Free On-line Dictionary of Computingの資料の一部を基にしており、GFDLの下で使用されています。

外部リンク

情報処理学会のワークステーション年表
* Apollo DomainOS info and archive

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