アマテ

アマテ紙：メキシコの伝統的な手漉き紙

アマテ紙は、メキシコでプレヒスパニック時代から作られてきた伝統的な手漉き紙です。その起源は古く、アステカ帝国時代には、通信、記録、儀式など、重要な用途に広く用いられていました。しかし、スペインによる征服後、アマテ紙の生産は一時的に禁じられ、ヨーロッパ式の紙に取って代わられることとなります。

伝統の継承と現代への復活

スペインの支配下で、アマテ紙の生産は公には禁止されましたが、プエブラ州北部やベラクルス州北部といった山岳地域では、その伝統が細々と受け継がれていました。特に、プエブラ州のサンパブリートという小さな村では、シャーマンが儀式用の「魔術的な」効果を持つアマテ紙を生産していました。20世紀半ばになると、商業に関わるオトミ族の人物が、この「魔術的な効果を持つアマテ紙」に注目したことから、外国の学者たちが関心を寄せるようになりました。これをきっかけに、ゲレーロ州のナワ族の画家が起用され、メキシコシティなどで「新しい」土着工芸品としてアマテ紙の販売が開始され、メキシコ政府もこの事業を推進しました。技術革新も行われ、アマテ紙は国内外で販売されるようになり、メキシコ先住民の手工芸品として最も普及した商品の一つとなりました。

アマテ紙の製造工程

アマテ紙の基本的な製造方法は、プレヒスパニック時代から受け継がれており、クワ科やイチジク属の樹皮を原料としています。特に、巨大なイチジクは神聖な木とされ、儀式の中で樹皮が切り出されます。最適なのは内樹皮ですが、外側の樹皮も使用されます。以前は、樹皮を柔らかくするために水に一日以上浸していましたが、現在は煮沸する方法が一般的です。煮沸時間を短縮するために、水に灰や石灰を加えることもありましたが、その後、工業用苛性ソーダが用いられるようになりました。3時間から6時間煮沸した後、苛性ソーダを使用した場合は、きれいな水で洗浄します。柔らかくなった繊維は水中で保管し、腐敗を防ぎます。この段階で塩素系漂白剤を混ぜると、紙の白色度が向上します。

柔らかくした繊維は、繊維が張り付かないように石鹸を塗った木製の板の上に、上質な紙を作る場合は格子状に、それ以外の場合は無秩序に配置します。そして、常に濡れた平たい石で叩き、平らに引き伸ばしていきます。イチジクの細胞には接着剤のような役割を果たす可溶性炭水化物が含まれており、水に浸すことで遊離し、繊維同士を結びつけるのです。足りない部分には紙の小片を加えます。平たくした後は、丸みのあるオレンジの皮の上で天日干しします。天候によって乾燥時間は異なり、晴れた日には1時間から2時間、湿度の高い日には数日かかることもあります。乾燥後、余分な部分を刃物で整えればアマテ紙の完成です。

アマテ紙の魅力

アマテ紙は、その独特な風合いと、手作りならではの温かみが魅力です。また、古代から伝わる伝統的な製法を守りながら、現代のニーズに合わせた新しいデザインや用途が生み出されています。アマテ紙の絵画や工芸品は、メキシコの文化を象徴するものとして、国内外で高く評価されています。アマテ紙の復活は、伝統文化の継承と創造的な発展の好例と言えるでしょう。

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