アメシスト

アメシスト（Amethyst）

アメシストは、美しい紫色の水晶であり、その名前は古代ギリシャ語の「ἀμέθυστος（améthustos）」に由来し、酔わせないという意味を持っています。この石は、古来から酔いを抑える効能があると信じられてきました。そのため、アメシストは特に価値を持ち、意義深い宝石として扱われてきました。

性質・特徴

アメシストの硬度は7であり、比重は2.65です。化学組成は二酸化ケイ素（SiO2）から成り、素焼きの陶板にこすりつけると白い条痕を残します。割った際には貝殻状の断口が観察されます。

色合いは淡いライラック色から濃紫色まで多岐にわたりますが、紫色の発色は微量の鉄イオンと放射線による電子の移動から生じるものです。このプロセスにより、紫色が形成されますが、紫外線に曝露すると退色するため注意が必要です。アメシストは照射される光のスペクトル組成によって色合いが変化することがあり、「カラーチェンジアメシスト」と呼ばれるタイプも存在します。

また、アメシストは加熱によって色が黄色に変わり、この状態をシトリン（黄水晶）と呼びます。現在市販されているシトリンのほとんどはアメシストを加熱したものです。一方、ガンマ線や熱を当てることで緑色のプラジオライトが生成され、これをグリーンアメジストと呼びます。色の変わり方は、鉄イオンの状態によって異なるため、非常に興味深い現象です。

この水晶は温度ごとに変化があり、420℃未満ではアメシスト、420℃から440℃では不安定なプラジオライト、440℃以上では主にシトリンに変わります。最適な温度でシトリンを得るためには約560℃が理想とされています。さらには、透明な水晶に放射線を当てることで紫と緑色の着色が起こる場合もあります。

産出地

アメシストは、ブラジルのリオ・グランデ・ド・スール州が世界最大の産地として知られています。スリランカ、マダガスカル、中央アフリカ、ウルグアイ、ザンビアでも高品質なものが産出されます。日本国内では、宮城県白石市の雨塚山や鳥取県で見つかります。

産出状態

アメシストは、晶洞（ジオード）の中で熱水が蒸発してミネラル分が結晶化することにより形成されます。また、合成アメシストも人工的に作ることが可能であり、天然のものと同様の特性を持っていますが、品質の高い天然のものと区別するのは難しい場合があります。

種類

アメシストには、深い色合いの「ディープシベリアン」と淡い色合いの「ローズ・ド・フランス」があります。さらに、加熱によって黄色くなったものはシトリンと呼ばれ、一部がシトリン化したものをアメトリンと呼びます。プラシオライトもあり、特定の地域から産出されます。

用途・加工法

主に装飾品として使用され、特にジュエリーに人気があります。熱や放射線により色が変わる特性を活かしたデザインも多く、時にはその変化自体が楽しめます。

話題

アメシストは2月の誕生石としても知られ、旧約聖書にも登場します。聖公会の主教が身に着けるエピスコパルリングには、酔いを防ぐ意味合いのあるアメシストが使われているとされています。また、ギリシャ神話には、アメシストが酒神の涙によって紫色の水晶になったという物語があります。

アメシストは貴重な宝石の一つとされ、特にブラジルの発見以前は非常に珍重されていました。このように、アメシストは美しさだけでなく、歴史的な意義も持つ興味深い石です。

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