アユモドキ

アユモドキについて

アユモドキ（学名：Parabotia curtus）は、コイ目のドジョウ科に属する日本固有の淡水魚です。全長15 - 20センチメートルの体形を持ち、黄褐色の背面や体側面と白い腹面が特徴的です。アユモドキの生息地は主に日本の特定の河川系に限られており、特に京都府亀岡市の桂川水系や岡山県の旭川・吉井川水系に分布します。しかし、琵琶湖や淀川水系ではすでに絶滅していると考えられています。

生態と生息環境

アユモドキは主に河川の中・下流域や水路に見られ、砂礫や砂泥の底質で構成される環境を好みます。具体的には石組みなどの遮蔽物が多い場所を選び、貧腐水性の水質でも生息しています。水温は夏でも30℃を超えない範囲を好み、食性は底棲の昆虫やイトミミズなど多岐にわたります。また、繁殖は6～9月に行われ、メスの体側をオスが擦り合わせることで卵を放出します。卵は早ければ1日で孵化し、成魚になるには通常2年を要しますが、中には生後1年で性成熟を迎えるものもいます。

生息環境の脅威

アユモドキは近年、多様な環境要因によって生息数が大きく減少しています。河川改修や圃場整備による生息地の消失、堰の設置による移動の障害、さらには捕食者の影響もその一因です。特にカワウや外来種であるオオクチバス、カムルチーなどがその生息数を脅かしています。そのため、アユモドキは1977年に国の天然記念物に指定され、2004年には種の保存法にしたがって国内希少野生動植物種としても認定されています。

保護活動

各地でアユモドキの保護策が進められており、休耕田を利用した産卵場所の整備や生息環境の改善が試みられています。具体的には、啓蒙活動や密猟の監視などが行われています。岡山県では関連商品を販売し、その収益の一部を保護活動に充てています。また、京都府のいくつかの場所は「アユモドキの生息する灌漑用水路」としても認定されており、地域の価値を高める取り組みが行われています。

絶滅危惧種としての状況

アユモドキは環境省によって絶滅危惧IA類（CR）に指定されており、保護の必要があります。神戸市立須磨海浜水族園や姫路市立水族館などでの累代飼育が行われており、精子の凍結保存にも成功していますが、依然として自然界での生息数は不安定です。最近のデータでは、桂川水系での生存状況にムラがあり、減少傾向が続く実態が報告されています。こうした背景をふまえ、アユモドキの保存は地域の生態系のみならず、日本の生物多様性の維持にとっても重要な課題です。

アユモドキは日本の豊かな自然の象徴とも言える存在であり、その保護は私たちの責任です。今後も持続的な保護策が進むことが期待されています。

もう一度検索