コイ目

コイ目（Cypriniformes）とは

コイ目は、硬骨魚類に属する分類群で、コイ、フナ、タナゴ、ドジョウなど、多様な淡水魚を含むグループです。6科で構成され、約4000種もの魚類が所属しています。特にコイ科は約3000種を擁し、魚類の中で最大の科を構成しています。

これらの魚は、食用や観賞用として広く利用され、人間にとって非常に身近な存在です。本稿では、コイ目の構成や特徴、分類について詳しく解説します。

コイ目の概要

2006年時点で、コイ目には3200種以上が記載されており、魚類の目の中ではスズキ目に次いで2番目に大きなグループです。現生魚類の1割以上、淡水魚に限ると4分の1以上がコイ目に属しています。1994年以降、新種が多数発見されており、その多様性は拡大を続けています。

コイ目の魚は、ほぼ全てが淡水魚で、熱帯から寒帯、河川、湖沼、渓流まで、幅広い環境に生息しています。ユーラシア、北アメリカ、アフリカ大陸とその周辺に分布していますが、南アメリカ大陸には生息していません。また、強酸性の湖にも生息できる種もおり、水質への適応能力も高いことが知られています。成魚の大きさは、1cm程度の小型種から3mに達する大型種まで存在し、体色や食性、繁殖形態も多種多様です。

コイ目の形態

コイ目魚類には、咽頭歯という共通の重要な特徴があります。通常の魚とは異なり、口の中に歯を持たず、喉の部分にある咽頭骨に形成された歯で食物をすり潰します。この咽頭歯の形状は、分類において重要な形質として利用されています。

多くの種は口ひげを持ち、上顎を突き出すことができます。頭部には鱗がなく、鰭は軟条のみで構成されますが、一部の種では背鰭に棘条のような頑丈な鰭条が見られます。また、背鰭は1つだけで、ドジョウ科の一部を除いて脂鰭を欠きます。下咽頭骨に形成された咽頭歯は、パッド状に拡張した基後頭骨突起と噛み合い、飲み込んだ餌をすり潰します。

さらに、コイ目はカラシン目やナマズ目などと共に骨鰾上目というグループに属し、ウェーベル氏器官という独特な構造を持っています。ウェーベル氏器官は、変形した4つの脊椎骨で構成され、内耳と浮き袋を繋ぎ、脳に音を伝える役割を果たします。

コイ目の分類

コイ目は、2上科6科で構成されています。近縁のグループには、ネズミギス目、カラシン目、ナマズ目、デンキウナギ目などが含まれます。近年、アメリカ国立科学財団によってコイ目の系統解析プロジェクトが進められており、生物多様性の解明が進められています。

コイ上科

コイ科（Cyprinidae）
約3000種を含む、淡水魚最大の科です。北米、アフリカ、ユーラシア大陸に分布し、食用や観賞用として利用される種が多く、ゼブラフィッシュのように生物学の研究に用いられる種も存在します。咽頭歯は1-3列で、各列8本を超えることはありません。コイ科の魚類は、体長5cm未満の小型種から3mに及ぶ大型種まで存在します。最古の化石は始新世の地層から発見されています。
コイ亜科（Cyprininae）
ダニオ亜科（Danioninae）
タナゴ亜科（Acheilognathinae）
カマツカ亜科（Gobioninae）
ウグイ亜科（Leuciscinae）
クセノキプリス亜科（Oxygastrinae）

ドジョウ上科

ギュリノケイルス科（Gyrinocheilidae）
東南アジア山岳地帯の渓流に分布する1属3種からなるグループです。口が吸盤状になっており、藻類を食べることで知られています。観賞魚としても人気があります。
サッカー科（Catostomidae）
北米を中心に分布する4亜科13属72種で構成されるグループです。大型種が多く、底生生活を送る種類が多いのが特徴です。口が下向きで、咽頭歯は1列16本以上あります。
ドジョウ科（Cobitidae）
ユーラシア地域とモロッコに分布する2亜科26属177種で構成されるグループです。ドジョウやシマドジョウなどが含まれます。底生性で、観賞魚として人気のある種もいます。口はやや下向きで、3-6対の口ヒゲを持っています。
ドジョウ亜科（Cobitidae）
アユモドキ亜科（Botiinae）
タニノボリ科（Balitoridae）
ユーラシア地域に広く分布する2亜科59属590種で構成されるグループです。フクドジョウ亜科はかつてドジョウ科に分類されていましたが、現在はタニノボリ科に分類されています。種数は概算であり、再検討が望まれています。近年、新種の発見が相次いでおり、未発見種が多く存在すると考えられています。
フクドジョウ亜科（Nemacheilinae）
タニノボリ亜科（Balitorinae）

コイ目の多様性

コイ目は、その多様性から分類が難しいグループであり、現在も研究が進められています。これらの魚は、淡水生態系において重要な役割を果たしており、その保全が重要です。

参考文献

Nelson JS, Fishes of the World (4th ed), New York, John Wiley & Sons INC, 2006
上野輝彌・坂本一男 『新版 魚の分類の図鑑』 東海大学出版会 2005年
川那部浩哉・水野信彦・細谷和海 編・監修 『日本の淡水魚 改訂版』 山と溪谷社 1989年
松浦啓一編著 『魚の形を考える』 東海大学出版会 2005年
岩井保 『魚学入門』 恒星社厚生閣 2005年

外部リンク

FishBase‐コイ目 （英語）
コイ目専門・コイ目一覧表

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