アントステラ

株式会社アントステラは、日本の菓子製造業者として知られ、東京都港区白金台に本社を構えています。特に、アメリカンカントリースタイルを特徴とする焼きたてクッキーの専門店「ステラおばさんのクッキー」を主力ブランドとして全国に展開しています。

同社の歴史は、1974年4月10日に始まります。アメリカ合衆国ペンシルベニア州から来日したジョセフ・リー・ダンクル氏によって、株式会社ローリードールとして設立されました。設立当初は、西武流通グループのアイスクリーム部門を担当する企業として、主に西友ストアなどの店内に「ダンクルアイスクリームショップ」を開設し、アイスクリーム販売事業を展開していました。事業は順調に拡大し、1978年にはフランチャイズ方式による店舗展開を開始。1980年7月末の時点で、既に40店舗を数えるまでに成長していました。また、アイスキャンデーの製造や、フローズンヨーグルトを扱う「ビバルトショップ」のチェーン展開など、初期は冷菓事業を中心に多角的な展開を行っていました。

事業の大きな転換点となったのは、1982年です。この年に、手焼きクッキーの専門店「アントステラ 〜ステラおばさんのクッキー〜」の展開をスタートさせました。当初は西武百貨店や西友ストアの7店舗で試験的に導入されましたが、このクッキー専門店の人気が非常に高く、大成功を収めます。この成功を受けて、以降の事業の中心はクッキーの製造・販売へと大きくシフトすることとなりました。クッキー事業の勢いを背景に、1980年代後半から1990年代前半にかけては、ブランドイメージを活かした更なる多角化を試みました。具体的には、「ステラおばさんの故郷」をテーマにした旅行企画、アンティークの食器や家具の販売・レンタル、子供服の販売など、幅広い分野に進出しましたが、1997年頃の事業別売上構成を見ると、クッキー製造販売が年商55億円の実に91%を占めており、アイスクリームや家具・インテリアといった他の事業はそれぞれわずか3%程度に留まっていました。

1999年に入り、企業イメージの明確化とブランドとの一体化を図るため、社名を「ステラおばさん」を意味する英語「Aunt Stella」を冠した株式会社アントステラへと変更しました。「ステラおばさん」というブランド名は、創業者のジョセフ・リー・ダンクル氏の伯母であるステラ・ダンクル氏に由来しています。彼女は幼稚園の先生を務めており、「ステラおばさんのクッキー」で提供されるレシピは、まさにこのステラ伯母さんから直接受け継がれた伝統の味であるとされています。

しかし、急速な事業拡大は、同時に不採算店舗の増加という課題も引き起こしました。経営状況が悪化する中で、同社は経営再建の道を模索します。2005年2月には、投資ファンドである日興アントファクトリーの傘下に入り、徹底的な経営改革に着手しました。この再建努力は実を結び、翌年の2006年2月期には早期に黒字化を達成し、経営の安定を取り戻しました。その後、菓子事業のポートフォリオ強化を図っていた大手食品メーカー、森永製菓株式会社によって、2008年1月に買収され、現在は森永製菓グループの一員として事業を展開しています。

近年では、集客施策として新しい形態の店舗展開も試みられました。例えば、2015年12月には東京都港区のお台場にあるデックス東京ビーチに、クッキーの食べ放題を提供する「クッキーバイキングカフェ」を出店し、一時期の食べ放題ブームの一角を担いましたが、この店舗は2017年9月に閉店しています。

株式会社アントステラは、黎明期のアイスクリーム事業からクッキー事業へと主軸を大胆に転換し、経営危機を乗り越え、大手食品メーカーグループの一員となるなど、変化に富んだ歴史をたどりながら、現在も多くのお客様に愛される「ステラおばさんのクッキー」を提供し続けています。

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