アン・ライス

アン・ライス：ゴシックホラーの女王、その生涯と作品

アン・ライス（1941年10月4日 - 2021年12月11日）は、アメリカ合衆国出身の小説家であり、ホラー、ゴシック、ファンタジー小説の分野で傑出した存在です。彼女は特に「ヴァンパイア・クロニクルズ」シリーズで知られ、吸血鬼、ミイラ、魔女といったゴシックなモチーフを扱い、独自の耽美的な世界観を構築しました。彼女の作品は、ゴシック・サブカルチャーを愛好する若者を中心に、幅広い読者層に影響を与えました。

生い立ちと作家への道

本名ハワード・アレン・フランセス・オブライエンとして、ルイジアナ州ニューオーリンズでアイルランド系カトリックの家庭に生まれました。幼少期から男性的な名前を嫌い、「アン」という名前を使うようになります。テキサス女子大学、北テキサス大学を経て、サンフランシスコ州立大学で学士号と修士号を取得。政治学を専攻しました。1972年に愛娘ミシェルを白血病で亡くしたことが、作家としての道を歩むきっかけとなり、処女作『夜明けのヴァンパイア』を1976年に発表。「ヴァンパイア・クロニクルズ」シリーズとして発展し、彼女はベストセラー作家としての地位を確立しました。

世界的な成功

1994年に公開された映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では、脚本も担当。トム・クルーズ、ブラッド・ピットなどの豪華キャストが出演し、世界的な大ヒットとなりました。これにより、アン・ライスの名は広く知られるようになりました。2002年には続編映画『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』も公開されています。

1989年にサンフランシスコ・ベイエリアからニューオーリンズに戻り、晩年はカリフォルニア州ランチョ・ミラージュで過ごしました。ハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズ復興も支援しています。

作風と影響

カトリックの影響を受けた独特の非日常的な世界観が特徴で、熱狂的なファンを獲得する一方で、その世界観に馴染めない読者もいるなど、作風は好みが分かれるところです。アン・ランプリング、A・N・ロクロールといったペンネームも使用し、様々なジャンルの作品を発表しました。

彼女の作品は世界中で愛読され、『ニューヨーク・デイリーニュース』によると、総売上は1億3600万部に達しています。

日本での受容

日本では、「ヴァンパイア・クロニクルズ」シリーズを中心に多くの作品が翻訳されています。特に吸血鬼の表象において、日本のコンテンツ文化に大きな影響を与えました。しかし、シリーズの完訳は実現しておらず、2003年以降、新たな翻訳出版は行われていません。翻訳権のライセンス料高騰が原因であるとされています。

主な著作

ヴァンパイア・クロニクルズ
夜明けのヴァンパイア
ヴァンパイア・レスタト
呪われし者の女王
肉体泥棒の罠
悪魔メムノック
美青年アルマンの遍歴
メイフェア家の魔女たち
魔女の刻（とき）
ラシャー -続 魔女の刻
タルトス
単独作品
ザ・マミー
彷徨者アズリエル
* 幻のヴァイオリン

アン・ライスの作品は、映画、舞台、テレビドラマなど、様々なメディアで展開されています。彼女が創造したゴシックで耽美的な世界は、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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