イソフラボン

イソフラボンとは

イソフラボンは、フラボノイドの一種であり、特にマメ科植物に多く含まれる成分です。化学的には3-フェニルクロモンを基本骨格とする化合物の総称で、ポリフェノールの一種として分類されます。

イソフラボンの種類と特徴

栄養学的に重要なイソフラボンは、母核イソフラボン分子の水素原子がヒドロキシ基で置換された誘導体です。ダイズに含まれるゲニステインやダイゼインが代表的で、これらは体内で様々な生理活性を示すことが知られています。

イソフラボンは、フラボンとはフェニル基の位置が異なり、植物内ではフェニルプロパノイド経路から生合成されます。ダイズはヒトの主要なイソフラボン摂取源であり、ゲニステインとダイゼインが主要なイソフラボン類です。

イソフラボンの生合成

イソフラボン類は、高等植物においてフラボノイド化合物を作り出す通常のフェニルプロパノイド経路から分岐して生合成されます。フェニルプロパノイド経路はアミノ酸であるフェニルアラニンから始まり、中間体のナリンゲニンが2つのマメ科特異的酵素によって連続してゲニステインに変換されます。同様に、もう1つの生合成経路中間体であるカルコンは、3つのマメ科特異的酵素の連続した作用によってイソフラボン類ダイゼインに変換されます。
植物は、イソフラボン類とその類縁体を病原菌の感染やその他の微生物からの防御のためのファイトアレキシンとして利用しています。加えて、ダイズはイソフラボン類を、土壌の根粒菌を刺激し窒素固定のための根粒を形成させるために使用しています。

イソフラボンの分布

イソフラボンは、ダイズだけでなく、クズ、ムラサキツメクサなど、多くのマメ科植物に含まれています。豆腐や味噌などの大豆加工食品もイソフラボンを豊富に含んでおり、発酵食品ではイソフラボンの量が増加することが知られています。

植物組織内では、イソフラボンは配糖体として存在し、水溶性を高めています。また、マメ科植物が感染を受けると、イソフラボン誘導体が加水分解され、アグリコンが生成されます。

エストロゲン様の活性と代謝

ゲニステインやダイゼインなどのイソフラボンは、エストロゲン受容体に結合し、弱いエストロゲン様作用を示すことが知られています。このため、植物エストロゲンとも呼ばれますが、最新の研究では否定的な報告もあります。また、大豆イソフラボンのエストロゲン様作用は、代謝産物であるエクオールによるものという仮説も存在します。

ダイゼインは、腸内細菌によってエクオールに代謝されますが、エクオール産生菌を持つ人は限られています。エクオールは、エストラジオールと比較してエストロゲン受容体への親和性が異なり、選択的エストロゲン受容体モジュレーター（SERM）の特性を持つと考えられています。

健康への影響

イソフラボンは、乳がんや骨粗しょう症に対して保護的な効果を示す報告がある一方、効果が確認されていないものも少なくありません。イソフラボンに期待される効用が、食習慣に由来するものなのか、イソフラボン単独の効果なのかを注意する必要があります。

摂取量について

食品安全委員会は、大豆イソフラボンの摂取が乳がん発症の増加に直接関連しているという報告はないとしています。厚生労働省は、イソフラボンを濃縮した錠剤などで摂取する場合、1日30mgを上限とするように注意喚起しています。

病気との関連

イソフラボン摂取は、乳がん、胃腸がん、前立腺がん、卵巣がん、結腸直腸がんのリスク低下と関連するメタアナリシスがあります。また、大規模なコホート研究では、食品からのイソフラボン摂取量が多いほど、日本人女性の乳がんや脳梗塞、心筋梗塞のリスクが低下するという相関関係が見られています。

婦人科疾患、骨粗しょう症、認知症との関連

納豆の摂取頻度と月経状態・月経随伴症状には有意な関係がみられ、摂取頻度の増加は症状を軽減させる可能性があります。尿中に検出されるイソフラボンの多い人ほど骨密度が高いことが指摘されています。イソフラボン摂取が多い対象者では、認知機能障害のリスクが高かったという報告がある一方で、エクオールに認知症リスクを低下させる可能性が報告されています。

副作用

イソフラボンは甲状腺へのヨウ素の取り込みを阻害する作用があるため、ヨウ素欠乏の状態で大豆製品を多食したりイソフラボン大量摂取すると、甲状腺肥大をもたらす可能性があります。

健康食品としてのイソフラボン

サプリメントとしての大豆イソフラボンは、更年期障害の改善や骨粗しょう症の予防効果があると言われています。しかし、メタアナリシスでは、骨塩密度を有意に増加させるという報告がある一方で、効果がなかったという結果も報告されています。

養殖における利用

養殖ウナギの飼料に大豆イソフラボンを添加することで、オスをメスに変える技術が開発されています。

まとめ

イソフラボンは、様々な生理活性を持つ成分ですが、その効果や安全性についてはまだ研究段階です。摂取量や健康状態に注意しながら、バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。

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