イトヨ

イトヨ（糸魚）についての詳細

イトヨ（Gasterosteus aculeatus）はトゲウオ科に属する鮮やかな魚であり、その名称はイトヨ属全体を指すこともあります。日本の水域には、主にニホンイトヨ、太平洋系陸封型イトヨ、太平洋系降海型イトヨの三種が生息しています。これらの魚はそれぞれ異なった生態や特徴を持つため、以下に詳しく解説します。

日本のイトヨ属の種類

日本にはイトヨ属が4種存在しますが、これまでの長い間、3種は「イトヨ」として一括りに扱われ、「ハリヨ」という1種が別にされたことがあります。これに対して、近年の研究により太平洋型はさらに細分化され、太平洋系陸封型と降海型に分けられました。この分化は、おおよそ200万年前の出来事と考えられています。

ニホンイトヨ

ニホンイトヨは、サハリンや千島列島、沿海州、朝鮮半島の東岸、日本の各地にも広く分布しています。日本では特に北海道や長崎県の日本海側、さらに千葉県の太平洋側に多く見られます。この魚は淡水域で孵化し、海に移って成長する遡河回遊型です。繁殖期は毎年3月から5月にわたり、水田周辺の小川に遡上して産卵します。特徴的な鱗板の数は32から35です。別名としては、春告魚やトゲウオ、絲魚など、地域によりさまざまな呼び名があります。

太平洋系陸封型イトヨ

この型は主に北海道大沼、青森県、福島県、栃木県那須、福井県大野などの淡水域に生息しています。今回の陸封型は、夏の水温が20℃を下回る清流や池に生息します。繁殖期は4月から8月までで、鱗板の数は18から34と少ないため、特徴的です。栃木県ではハリウオやヒヤカシなどの別名もあります。

太平洋系降海型イトヨ

この型は、北太平洋沿岸部に分布しており、日本では北海道の太平洋側で見られます。ニホンイトヨ同様、体に鱗板を持ち、鱗板の数は32〜35となっています。別名としてはトゲウオやアイウシチェプ（アイヌ語）などがあります。

形態と特徴

イトヨの全長はおおよそ10センチメートルですが、太平洋系陸封型の個体は5〜7センチメートルと小型です。体は木の葉のように平く、背中や腹部にはトゲが発達しています。体色は一般的に褐色ですが、成熟したオスは青味を帯び、婚姻色として赤色を発現します。特にニホンイトヨの体側は連続した鱗板で形成されています。

生態

若いイトヨは群れで生活し、小型の動物プランクトンや甲殻類を食べて成長します。成熟したオスは縄張りを形成し、他のオスを追い払う行動が見られます。このオスは川底に巣を作り、産卵のためにメスを誘います。卵が産み落とされた後も、オスはその巣に留まり、卵を守ります。一般的にイトヨの寿命は1年ですが、まれに2年目の繁殖に挑戦する個体も存在します。

敵対的行動

繁殖期のオスは、色や形に関わらず体の下側が赤いものに対して攻撃的な反応を示すことが確認されています。これは生存戦略などに関連しており、本能的な行動として理解されています。

利用と保全に関する現状

新潟県ではニホンイトヨが天ぷらやから揚げなどの料理に利用されていましたが、近年はその数が減少し、捕獲が難しくなっています。また、交雑の事例としては、岩手県の大槌町での東日本大震災後、太平洋系陸封型イトヨがニホンイトヨと交雑し、新たな個体群が生まれることになりました。このように、日本のイトヨ属はその独特な生態系を守るために、多くの課題に直面しています。

保全状態

日本における2020年版の環境省レッドリストでは、ハリヨが絶滅危惧IA類として評価されており、福島県以南の太平洋系陸封型イトヨ及び本州のニホンイトヨも「絶滅のおそれのある地域個体群」としてリストアップされています。これにより、それぞれの種の保全が急務であることが再確認されています。

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