ウソをついたら

トムとジェリー：ウソをついたら

1949年2月26日に公開されたトムとジェリーの短編アニメーション『ウソをついたら(Polka-Dot Puss)』は、嘘とペテン、そして予想外の結末が織りなす、痛快なコメディ作品です。

物語は、いつものようにジェリーを捕まえて遊んでいたトムから始まります。しかし、その夜、お手伝いさんから雷雨の中、外で寝るよう命じられたトムは、耐え難い状況に陥ります。そこでトムは、巧妙な策略を思いつきます。それは、わざと大げさなクシャミを連発し、風邪を装うという大胆な嘘でした。

最初は疑われたものの、巧みな演技で家の中で寝ることを許されたトム。しかし、このやり取りをすべて見ていたジェリーは、トムへの仕返しを計画します。

暖炉のそばで安らかに眠るトムに、ジェリーは寝ているトムの顔に赤褐色の絵具で発疹のような落書きをします。そして、トムが目覚めると、新聞記事を見せます。そこには「麻疹が大流行」との見出しが躍り、くしゃみや鼻水への注意が促されていました。さらに、鏡に映った顔の発疹を見せたことで、トムは自分が麻疹にかかったと思い込んでしまいます。

この嘘に乗じたジェリーは、お医者さんごっこを始めます。聴診器に見せかけた目覚まし時計でトムを驚かせたり、冷凍庫に閉じ込めたり、オーブンで焼いたり、冷水シャワーを浴びせたりと、トムをさんざんにいたずらします。

ボロボロになったトムでしたが、シャワーによって顔の発疹が消え、ジェリーが隠していた絵具を発見したことで、自分が麻疹にかかっていたという嘘に気づきます。怒り狂ったトムは、ジェリーに剣を突きつけますが、ジェリーの異様な様子に気づきます。ジェリーの体に発疹が現れ、今度はジェリーが本当に麻疹にかかってしまったのです。

ジェリーとの接触により、トムも麻疹にかかってしまい、2匹は仲良く麻疹に苦しむという、皮肉な結末を迎えます。

この作品は、トムとジェリーの定番の追いかけっこだけでなく、トムの嘘とジェリーのいたずら、そして予想外の展開が絡み合い、見ている者を飽きさせません。また、作品全体を通して描かれる、ユーモラスな描写や、テンポの良い演出が、この短編アニメーションの魅力を高めています。

登場人物たちの個性も光ります。嘘をついたために痛い目を見るトム、いたずら好きでトムを翻弄するジェリー、そして、状況を冷静に見つめるお手伝いさん。それぞれのキャラクターがストーリーに深みを与え、作品全体の面白さを引き立てています。

『ウソをついたら』は、トムとジェリー作品の中でも特に記憶に残る、傑作の一つと言えるでしょう。単純な追いかけっこだけでなく、嘘とペテン、そして最後に訪れる皮肉な結末は、観る者に多くの笑いと驚きを与えてくれます。 嘘をつくことの危険性と、報いといったテーマも、子供向けアニメーションでありながら、さりげなく描かれている点も興味深い作品です。監督であるウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラの才能が光る、見逃せない一本です。

もう一度検索