ウダチ

ウダチ

ウダチ（生没年不詳）は、13世紀初頭にチンギス・カンに仕えたウリヤンカン部出身の千人隊長です。ペルシア語史料では「Ūdāchī」と表記されます。

概要

ウダチに関する記録は、『元朝秘史』には見られず、『集史』にのみ残されています。『集史』によれば、彼は「森のウリヤンカン部」出身で、チンギス・カンによって左翼15番目の千人隊長に任命されました。

「森のウリヤンカン部族志」によると、ウダチ率いる千人隊は、ブルカン・カルドゥンにあるチンギス・カンの御陵を守護することを代々の使命としていました。

『集史』には、彼の千人隊が「チンギス・カン家と姻戚関係を結ばなかった」「決して出征することはなかった」「決して親衛隊(ケシクテイ)に入ることはなかった」とも記されています。これは、彼らの任務がチンギス・カン家の御陵守護に特化していたことを示唆しています。

ウダチに関する記録が少ないのは、彼が内政や外政に関与せず、ひたすら御陵の守護に専念していたためと考えられます。

モンゴル帝国が分裂後、ダヤン・ハーンによって再統一された際、「ダヤン・ハーンの6トゥメン」の一つであるウリヤンハン・トゥメンは、「主の黄金の棺を守った、また大きな運命のある国人」と記されました。これは、ウリヤンハン・トゥメンがチンギス・カン時代のウダチの千人隊の後身であることを示唆しています。

このように、ウダチはチンギス・カンの御陵を守るという特別な使命を帯びた千人隊長であり、その足跡は後のモンゴルの歴史にも影響を与えました。

参考文献
岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』藤原書店、2010年
志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
* 村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年

もう一度検索