エグゼクティブ・エクスプレス

エグゼクティブ・エクスプレス

エグゼクティブ・エクスプレスは、日本航空（JAL）が運航していた特別仕様のボーイング747であり、主に東京（新東京国際空港）とニューヨーク（ジョン・F・ケネディ国際空港）との直行便に利用されました。ボーイング747-200Bを基にしており、その性能を向上させるためにエンジンの変更や追加の燃料タンクの装備が行われました。このような改修により、同じ路線の競合機であるボーイング747-SPと同等の航続距離を確保することができ、JALにおいて初めてこのルートを直行することが可能となりました。

概要

エグゼクティブ・エクスプレスは、1983年に東京とニューヨーク間の直行便化を実現するために導入されました。それまで、JALはダグラスDC-10を使用し、アンカレッジ経由で運航していましたが、競合のパンアメリカン航空（パンナム）が747-SPを使用して直行便を運航する中、JALは747-SPを持っていなかったため、直行便の運航が困難でした。これに対抗する形で、JALはボーイング747-200Bの超長距離仕様機を導入することを決定しました。

特別仕様機であるボーイング747-246Bは、1983年に2機（JA8161とJA8162）が導入され、同年7月1日から運航を始めました。1986年にはさらに1機（JA8169）が追加され、これらは「EXECUTIVE EXPRESS」という特別なロゴを機首に掲げて運航されました。

特徴

本来、JALが保有していたボーイング747-200Bに搭載されているエンジンは、プラット・アンド・ホイットニー（P&W）社製のJT9D-7Qですが、エグゼクティブ・エクスプレスでは747-300用の最新エンジン、JT9D-7R4G2が搭載されました。加えて燃料タンクの増設も行われ、これにより747-SPと同等の航続距離を持つ能力を実現しました。

成田とニューヨークの便では、主にビジネス客をターゲットにした客室配置が採用されており、ファーストクラスに44席、ビジネスクラスに128席、エコノミークラスに114席が設定されるなど、業界標準とは異なる特色を持っていました。特にエコノミークラスは総座席数に対して半数未満という異例の配置が特徴で、1985年にはビジネス客専用としてファーストクラス44席、ビジネスクラス204席、エコノミークラス0席という特異な運航も行われました。

JA8169機には、通信衛星を介して通話が可能な「サテライトコミュニケーションシステム」が装備されており、より快適なサービスを提供できるよう進化していました。

その後

エンジン性能の向上に伴い、ボーイング747-200Bでも超長距離の運航が可能になりました。これにより、後に製造された747-200BにはP&Wの標準エンジンがJT9D-7R4G2に変更され、航続距離は11397 kmにまで延長されました。エグゼクティブ・エクスプレスはボーイング747-400の登場により専用機としての役割を終え、通常の国際線機材と同様の運営に移行しました。

2000年代に入ってからは、JA8161とJA8169の2機が貨物機に改造され、2007年までに退役しました。特にJA8161は同年に退役し、この特別な機体はJALの歴史の一部として記憶され続けることとなります。

エグゼクティブ・エクスプレスの運航を通じて、JALは航空業界における競争力を高めるだけでなく、ビジネス客向けのサービス提供の重要性を改めて確認することとなりました。

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