エヌ・シー・エヌ

株式会社エヌ・シー・エヌ（英文社名：New Constructor's Network Co., Ltd.）は、日本の主要な木造建築関連企業の一つです。現在の本社は東京都千代田区永田町に位置し、主に木造建築の安全性を高める構造システムや構造設計サービスの提供を事業の中核としています。

同社の設立には、1995年に発生した阪神・淡路大震災が決定的な契機となりました。この未曽有の大震災は、多くの木造家屋に甚大な被害をもたらし、日本の伝統的な木造建築の構造的な弱点を浮き彫りにしました。当時、日商岩井株式会社に勤務していた田鎖郁男氏は、この惨状を目の当たりにし、地震に強い木造建築を普及させることの社会的な重要性を強く認識しました。

このような背景から、木造建築の耐震性能を飛躍的に向上させるための新しい技術開発と普及を目指し、田鎖氏の発案により、1996年に株式会社エヌ・シー・エヌは設立されました。設立は、高い木材加工技術を持つセブン工業株式会社と、総合商社としての知見やネットワークを持つ日商岩井株式会社との合弁事業として実現しました。当初、会社の本社は岐阜県美濃加茂市に置かれていました。

設立後、同社は木造建築の構造設計における革新的な技術である「SE構法」の開発に注力しました。これは、構造家である播繁氏の協力を得て生み出された独自の工法です。SE構法は、断面の大きな構造用集成材を柱や梁に用い、それらを特殊な金物で強固に接合することを特徴としています。これにより、従来の木造軸組工法では構造上の制約から難しかった、柱や壁の少ない広々とした空間や、大きな開口部を持つ設計が可能となりました。同時に、構造計算に基づく合理的な設計手法と組み合わせることで、地震や台風などの自然災害に対しても高い安全性を確保することを目指しています。

株式会社エヌ・シー・エヌは、このSE構法を核とした構造計算受託サービスや構造躯体の供給を通じて、設計事務所や工務店に対し、安全でデザイン性の高い木造建築を実現するためのソリューションを提供しています。一棟一棟、厳密な構造計算を行い、その安全性を検証することで、建築主に対して高い安心感を提供しています。

また、同社の経営方針として注目されるのが、設立以来継続している無借金経営です。これは、外部からの借入に依存しない堅実な財務体質を示しており、経済環境の変動や突発的な事態に対しても強い事業継続力を持つ基盤となっています。安定した経営基盤は、長期的な技術開発やサービス提供においても重要な要素となります。

会社の歩みを振り返ると、1996年の岐阜県での設立から始まり、事業の成長とともに拠点を移してきました。2018年には本社を東京都港区に移転し、さらなる事業拡大を目指しました。そして、翌年の2019年には、東京証券取引所JASDAQ（スタンダード市場）への上場を果たしました。これは、同社の事業内容や経営姿勢が社会的に広く認められ、信頼を得ていることの証であり、企業としての透明性や信用力を高める出来事となりました。現在は東京都千代田区に本社を構えています。

総じて、株式会社エヌ・シー・エヌは、阪神・淡路大震災という厳しい経験から学びを得て、「地震に強い木造建築」という社会的ニーズに応えるために設立された企業です。独自のSE構法とその徹底した構造設計技術により、木造建築の可能性を広げ、日本の建築業界において重要な役割を担っています。無借金経営による安定した基盤と上場企業としての信頼性を背景に、安全で豊かな暮らしを実現する木造建築の普及に今後も貢献していくことが期待されます。

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