播繁

播繁：日本の建築構造史に名を刻んだ構造家

1938年福岡県に生まれた播繁（ばん しげる）氏は、2017年9月5日にこの世を去りましたが、日本の建築構造界に多大な貢献を残した重要な人物です。日本大学理工学部建築学科卒業後、鹿島建設に入社。同社で技術長や副部長などを歴任し、1998年には自身の設計事務所である播設計室を設立しました。

耐震構法SE構法の開発

播氏の最も大きな功績の一つに、耐震構法SE構法の開発があります。SE構法は、高い耐震性を誇り、多くの建築物に採用されました。その技術は、日本の建築構造の安全性を向上させる上で大きな役割を果たしました。氏は、エヌ・シー・エヌ社の顧問も務め、SE構法の普及にも尽力しました。

著名建築家との協働と数々の受賞

播氏は、丹下健三氏、隈研吾氏、杉山隆氏など、日本を代表する建築家たちと数々のプロジェクトで協働しました。赤坂プリンスホテル新館、両国国技館、フジテレビ本社ビルといった、誰もが知るランドマーク建築物の構造設計に携わったことは、氏の高い技術力と信頼性の証です。

その卓越した技術とデザインセンスは高く評価され、多くの賞を受賞しました。主な受賞歴には、JSCA賞、松井源吾賞、日経BP技術賞、日本建築学会賞、英国技術者協会特別賞、日本鋼構造協会賞など、建築界における権威ある賞が数多く含まれています。特に、出雲ドームや長野オリンピック記念アリーナ（エムウェーブ）といった大規模建築物の構造設計で高い評価を受けました。

独立後：多様な建築プロジェクトへの貢献

播設計室設立後は、独立系の建築家や設計事務所との協働を通して、より多様な建築プロジェクトに携わりました。箱の家シリーズや沖縄県立博物館・美術館、山梨県小瀬スポーツ公園アイスアリーナなど、規模や様式は様々ですが、いずれも氏の技術と哲学が凝縮された作品です。これらは、氏の幅広い設計能力と、建築に対する深い理解を示しています。

構造デザインへの哲学

播氏は、単なる構造設計にとどまらず、「構造デザイン」という概念を重視していました。構造物を単に安全に支えるだけでなく、建築全体のデザインに積極的に関与し、構造そのものが建築表現の一部となることを目指しました。この考え方は、氏の作品に一貫して見られる特徴であり、その独特な建築観を示しています。

建築界への影響

播繁氏は、耐震構法の開発、数々の受賞歴、著名建築家との協働、そして播設計室設立を通じ、日本の建築構造界に大きな影響を与えました。その功績は、安全で美しく、そして革新的な建築空間を生み出すという、未来の建築家たちの指針となるでしょう。氏の残した作品群は、日本の建築史における重要な遺産であり、これからも多くの人々にインスピレーションを与え続けることでしょう。

主要な設計作品一覧

独立前:
赤坂プリンスホテル新館 (丹下健三)
両国国技館 (杉山隆)
あきたスカイドーム
大阪東京海上ビルディング
出雲ドーム
FCGビル（フジテレビ本社ビル）(丹下健三)
長野オリンピック記念アリーナ (久米設計、KAJIMA DESIGN、奥村組、日産建設、飯島建設)

独立後:
箱の家シリーズ (難波和彦)
山梨県小瀬スポーツ公園アイスアリーナ (松田平田設計)
沖縄県立博物館・美術館 (石本建築事務所・二基建築設計室JV)
* その他多数

播氏の功績は、単なる構造設計の枠を超え、日本の建築文化全体に貢献したものであると言えるでしょう。

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