エヴォリミット

『エヴォリミット』（英: Evolimit）は、日本のゲームブランド「propeller」より2010年5月28日に発売されたアダルト向けアドベンチャーゲームです。シナリオを東出祐一郎氏が、原画を中央東口氏が担当しており、『あやかしびと』や『Bullet Butlers』といった過去作に通じる、熱く重厚なドラマが描かれています。

物語の舞台は、人類がテラフォーミングを進め、居住可能な環境を築きつつある火星です。この世界では、火星から発掘された未知の鉱石「パッチ」の力が文明を支えています。パッチを装着した人間は身体能力の向上、念話、そして各個人に固有の超常的な能力「固有能力（アビリティ）」を得て、文字通り超人と化しました。しかし同時に、正体不明の機械生命体「バルバロイ」が突如として出現し、人類の脅威となります。バルバロイは自己保存と増殖を至上命題とし、火星の都市を破壊し、人間を襲います。火星では機械が暴走する現象が確認されるようになったため、都市部からは徹底的に機械が排除されており、人々は機械に対して強い恐怖心を抱いています。

物語は、テラフォーミング計画に参加していた不知火義一と一条雫が、何らかの理由で100年間の眠りから記憶を失った状態で目覚めることから始まります。彼らが眠っていた間に、パッチの発見によって火星の環境改造は驚異的な速さで進みましたが、同時にバルバロイの襲撃も激化していました。目覚めた義一と雫は、自身にも装着されていたパッチの力を手に、戦いへと身を投じ、失われた記憶と100年前の出来事、そしてなぜ自分たちが眠りについたのかという謎を追うことになります。

この世界の重要な要素として、いくつかの概念が存在します。

パッチ: 火星で発掘される鉱石で、火星文明の基盤。装着者に超人的能力をもたらしますが、過剰な使用はパッチの破壊と能力喪失を招き、精神的な影響も大きいとされます。巨大な「環境調整パッチ」は都市全体のエネルギー源です。特定の道具が必要な「接続者」も存在します。
バルバロイ: 人類を襲う機械生命体。小型高機動の「妖精型」、戦闘の主力を担う「鬼人型」、それらを量産する移動工場「製造工場」、輸送機の「スコロペンドラ」、そして単体で都市壊滅能力を持つ巨大な「ヘカトンケイル」など、多様な種類が存在します。
災害の猿たち（カラミティ・モンキーズ）: 第一次火星開拓団の蔑称であり、同時に彼らが自らを呼んだ名。火星開発の英雄として神話化されています。パッチを巡る対立の末、シャノン・ワードワーズら5名が突如襲撃、開拓団を壊滅させました。彼らは「噴火」「雪崩」「地震」「通り魔」といった災害の名を冠し、人間への試練を標榜します。不知火と雫は彼らを封印しましたが、100年後にシャノンが目覚めたことで、彼らも再び火星に災厄をもたらします。
星の巫女: パッチを装着して生まれた、非常に強力な念動力を持つ人間。歴史上、その強大な力は時に悲劇を生んだため、代々の巫女は感情、特に恋愛感情を抑えるよう教育されます。主人公の味方である鷹星カズナや、彼女の母親で火星政府大統領の夢月サテラもこれにあたります。
* 進化の階段: 生命の心象世界に存在する概念。特定の意思と状況が揃うと認識でき、これを昇ることで生命は急激な進化を遂げます。主人公である不知火義一もこの階段を昇り、炎の能力を強化していきますが、同時に人間を超えた存在への変貌というリスクも伴います。究極的には宇宙そのものへと至るとされます。

主要な登場人物としては、炎を操り進化を遂げる主人公・不知火義一、二挺鉈を振るうクールなヒロイン・一条雫、強大な念動力を持つ市長・鷹星カズナ、体の半分が機械の軍部部長・リーティア・フォン・エアハルトといった面々が、バルバロイや復活した「災害の猿たち」と戦いを繰り広げます。また、白い犬の姿をした賢者・ポチ校長や、主人公の中に存在するもう一つの人格・ココロなど、個性豊かなキャラクターたちが物語を彩ります。特にココロは、主人公に悲しみの感情を伝える重要な存在であり、過去の出来事にも深く関わっています。

本作はGetchu.comが主催する「美少女ゲーム大賞2010」において、総合部門で19位、シナリオ部門で12位にランクインするなど、その物語性が高い評価を得ています。火星というフロンティアを舞台に、人間と機械、進化と退化、そして過去の因縁が交錯する、読み応えのある作品です。

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