クマノザクラ

クマノザクラとは

クマノザクラ（学名：Cerasus kumanoensis、英名：Kumano cherry）は、2018年に新種として確認された日本固有のサクラです。紀伊半島南部に自生し、日本のサクラ属基本野生種の一つに数えられます。

発見の経緯

紀伊半島南部には、従来からヤマザクラやカスミザクラに似た早咲きのサクラが自生していることが知られていました。地元では「早咲きのヤマザクラ」として認識されていましたが、森林総合研究所がヤマザクラの遺伝的変異を調査する中で、2014年に既存の種とは異なる可能性のある標本が発見されました。その後の調査の結果、2016年から2017年にかけて、森林総合研究所と和歌山県林業試験場が共同で現地調査と研究を実施。その結果、このサクラが既存の種の突然変異ではなく、新種であると判明しました。

日本のサクラ属の基本野生種としては、1915年のオオシマザクラの発見以来、約100年ぶりの新種発見となりました。森林総合研究所はこの新種のサクラをクマノザクラと命名し、2018年3月13日に発見が発表されました。学名は「Cerasus kumanoensis」、英名は「Kumano cherry」とされました。

クマノザクラの特徴

クマノザクラは、ヤマザクラに比べて樹高が低く、枝が細いのが特徴です。樹形は箒状で、若木のうちから美しい花を咲かせます。花弁のピンク色は鮮やかで、ヤマザクラやカスミザクラよりも花序柄が短く無毛、葉身は小さく卵形をしています。

また、開花時期が早いことも特徴です。例えば、和歌山県東牟婁郡古座川町では、ヤマザクラが4月中旬から下旬、カスミザクラが4月下旬に開花するのに対し、クマノザクラは3月中旬から4月上旬に開花し、これら2種と開花時期が重なりません。

クマノザクラは、三重県熊野市、奈良県十津川村、和歌山県田辺市本宮町などの熊野川流域を中心に、南北約90km、東西約60kmの範囲に自生しています。

今後の展開

森林総合研究所と和歌山県林業試験場は、クマノザクラが観賞価値が高いと判断し、種苗の普及を計画しています。今後は、優良個体の選抜や増殖方法の確立、病害抵抗性の検定を行い、高品質なクマノザクラの普及を目指しています。

自治体の花

クマノザクラが自生する和歌山県東牟婁郡古座川町では、2018年3月にクマノザクラを町の花として指定しました。

外部リンク

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