クラフトパルプ

クラフトパルプ（Kraft pulp）とは

クラフトパルプは、木材を原料とするパルプの一種で、その製造にはアルカリ性の薬剤が用いられます。この製造プロセスは、アルファベットの頭文字をとって「KP」と略されることもあり、一般的に「クラフトプロセス」または「クラフト法」と呼ばれています。クラフトパルプの「クラフト」は、ドイツ語で「強い」という意味を持ち、その名の通り、強度に優れたパルプを得られることが特徴です。

クラフトパルプの製法

クラフトパルプの製造は、まず木材をチップ状に細かく砕くことから始まります。この木材チップに、水酸化ナトリウム（苛性ソーダ）を主成分とするアルカリ性薬剤を加え、高温高圧下で煮ることでパルプ化を進めます。この際、アルカリ性薬剤には、硫化ナトリウムやポリ硫化ナトリウム、さらには助剤としてキノン、硫酸ナトリウム、硫化水素ナトリウムなどが添加されることもあります。これらの薬剤を混合した液体は「白液」と呼ばれます。

煮る過程で、苛性ソーダのアルカリ成分が木材に含まれるリグニンを水溶化し、同時に分解された有機酸を中和します。硫化ナトリウムは加水分解によって硫化水素ナトリウムとなり、さらに苛性ソーダへと変化するため、煮沸過程で消費される苛性ソーダの補充という役割も担います。煮沸後、溶液を分離し、残ったパルプを十分に洗浄して不純物を取り除きます。この洗浄されたものが、クラフトパルプとして利用されることになります。煮沸時に分離された溶液は「黒液」と呼ばれ、リグニンを多く含むため、ソーダ回収ボイラーで燃料として利用されます。この燃焼後に残る残渣（スメルトまたは緑液）は水溶性で、生石灰と混合することで再び白液として再利用されます。

クラフトパルプの利点

クラフトプロセスは、その汎用性と効率性から、化学パルプ製造において重要な位置を占めています。主な利点は以下の通りです。

幅広い原料への対応力：多様な種類の木材をパルプ化できるため、資源の有効活用に貢献します。
優れたパルプ強度：得られるパルプは非常に強度が高く、包装用紙や段ボールの原料として最適です。
薬品の再生利用：使用済みの薬剤を再生して再利用できるため、環境負荷を低減できます。
中和への抵抗性：ソーダ法と比較して、有機酸による薬剤アルカリ分の中和に対する抵抗性が高く、効率的なパルプ化が可能です。

これらの利点から、クラフトプロセスは亜硫酸法などの他のパルプ製造法と比較して、優位に立っています。

クラフトパルプの欠点

一方で、クラフトパルプにはいくつかの欠点も存在します。

透明度と純度の低さ：亜硫酸法で製造されるサルファイトパルプに比べて、透明度や純度が劣ります。そのため、高級印刷用紙など、高い白色度や透明度が求められる用途には不向きです。
悪臭の発生：製造過程で硫化水素、硫化メチル、メチルメルカプタンといった悪臭の原因となる成分が発生します。これらの成分は、製造現場や周辺環境に影響を与える可能性があります。

クラフトパルプの応用例

クラフトパルプは、その強度と汎用性から、幅広い用途で利用されています。

洋紙：漂白されたクラフトパルプは、印刷用紙や筆記用紙として広く使用されています。
クラフト紙：漂白されていないクラフトパルプは、強度を活かして包装紙や紙袋、段ボールの原料として利用されています。
段ボール：クラフト紙は段ボールの材料として不可欠であり、物流を支える重要な役割を担っています。

関連項目

紙#洋紙の製造
リグニン
黒液

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